研究課題/領域番号 |
20K00088
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
赤江 達也 関西学院大学, 社会学部, 教授 (30823819)
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研究分担者 |
大澤 絢子 東北大学, 国際文化研究科, JSPS特別研究員(PD) (50816816)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宗教 / メディア / 大正 / 求道者 / 宗教家 / 仏教 / キリスト教 / 宗教文学 |
研究実績の概要 |
2021年度は、大正期を中心に活動した独立系宗教者のメディア実践について、史資料を収集・分類しながら比較検討を行なった。具体的には、①大正期の文学における作家と宗教の関係性の検証および明治から大正期における修養と宗教との関係性の解明、②雑誌メディアとナショナリズムの観点からの無教会の検討を行い、③関連領域の研究者を招いて研究会を開催した。 ①では、親鸞を取り上げた小説に着目してその成果を報告し(「性に悩む親鸞像の形成──近代日本における歴史研究と文学の相関」第80回日本宗教学会、2021年9月)、論文をまとめた(「妻帯する親鸞──近代日本における僧侶家族論」『大谷大学真宗総合研究所紀要』第39号、2022年3月)。さらに、大正期に宗教的言説を大量に発信した三浦関造に関して国際学会にて報告し( “Miura Sekizo and Theosophy in Modern Japan”, 1st EANASE international conference, 2021年11月)、近代日本の修養にする論文を執筆した(「修養ブームが生み出した潮流:近代日本の自分磨き」『中央公論』135巻8号、2021年)。 ②では、「メディア宗教」の観点から無教会を再検討し(「「メディア宗教」としての無教会キリスト教」第4回「メディア宗教」公開研究会、2022年3月)、無教会とナショナリズムの研究を進めた(「無教会と皇室」『図書』9月号/学会発表「三つの「二つのJ」──内村鑑三による社会の記述」日本基督教学会、2021年9月)。 ③では、関連領域の研究者と意見交換を行ない、研究会を計6回、公開研究会計2回開催した(第3回「「メディア宗教」公開研究会 社会主義と宗教──『中外日報』の時代」2021年6月26日/第4回「「メディア宗教」公開研究会、2022年3月26日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、研究課題に関わる論文を発表し、研究会の開催や関連分野の研究者を招いての公開研究会および意見交換は、オンラインを活用するなどして研究を遂行できた。 しかしながら、新型コロナウイルスの流行による影響から、図書館等での資料収集や調査が計画通り進まず、対象とする宗教雑誌についての目録データベース作成や内容の分析を予定通り遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、大正期を中心に活動した独立系宗教者のメディア実践について史資料を収集・分類し、広く日本文化史における既成教団外の宗教的思想運動について考察を行う。 研究分担者の大澤は、引き続き仏教系の作家・評論家たちの言論活動を中心に検討し、既成の宗教カテゴリーに収まらない求道者たちの実践について、人名・雑誌リストを完成させる。各人物の書籍・個人雑誌のリスト化を進めつつ、その特徴を分析・比較することで、「折衷」志向型の宗教思想と「仏教/キリスト教/神道/その他」を横断する言説状況の解明を行い、求道者間のネットワーク図を整備する。 研究代表者の赤江は、キリスト者・内村鑑三に師事した無教会伝道者たちのメディア実践を検討する。主な対象は、黒崎幸吉・塚本虎二・矢内原忠雄らの個人雑誌である。彼らは大正から昭和初期に、内村の独立伝道に倣って個人雑誌を発行し、集会を主宰した。内村没後には十数人の独立伝道者を結節点とする無教会運動が形成された。その経緯を検討し、「純粋」志向型の宗教思想と「ネットワーク型」宗教思想運動の解明を行う。これらの検討により、明治後期に生まれた「求道的・超宗派的な精神性」の延長線上で、大正期に出現した「メディア宗教」的な状況の広がりと多様性を明らかにする。年度後半には、それまでの成果をふまえた総括的な作業を行う。「メディア宗教」概念にもとづく近代日本の「宗教的ランドスケープ」の見取り図については、公開研究会を開催し、報告書を執筆・作成する。また、最終的な研究成果は、研究代表者と研究分担者の共編著として刊行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の流行により、計画通りに図書館等での資料収集・出張を伴う調査ができず、参加予定であった学会もオンライン開催または中止が相次いだため、旅費や参加費の支出がなかったため、当初の計画よりも支出が少なくなった。 次年度以降は、引き続き資料収集と整理を進め、オンライン等を活用して研究会を実施しつつ、考察によって得られた成果を学会や研究会で報告していく。
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