プラトンは「イデア論」を提示した学者として広く知られている。しかしこの「イデア論」はプラトンの著作から取り出されたものではなく、アリストテレスの『形而上学』から取り出されたプラトンの形而上学説の解釈にすぎないことはほとんど知られていない。確かに今もなお多くの学者がイデア論解釈を支持しているのは事実であるが、この解釈には深刻な諸問題が指摘されている。そして私自身はプラトンの形而上学説は「思考の領域」と「感覚知覚の領域」の区分に基礎を置いており、むしろ「真実在説」として理解するほうが適切だと考える。本研究は、プラトン哲学にまつわる誤解を解くことによって一般に波及する学術的意義や社会的意義をもつ。
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