研究課題/領域番号 |
20K00113
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
吉原 浩人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80230796)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 摂関期・院政期 / 呉越・北宋 / 日中相互文化交流 / 源清 / 源信 / 天台本覚思想 / 慶滋保胤 / 『心性罪福因縁集』 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の平安時代中後期、すなわち摂関期・院政期の僧侶と、浙江地方を中心とする呉越・北宋の仏教界の思想・文化的交流、そして文人貴族の対外認識について、統一的に把握し闡明することを目的とする。 令和4年度12月までは、新型コロナ禍の影響を受け、北京大学との会議がオンラインになるなどの影響があったが、1月からは急速にコロナが終息に向かったため、3月には中国への渡航が可能となった。本課題に関連して5つの学会において基調講演・研究発表を行った。うち1つは、中国においての開催であったが、年度末に開催が決定したこともあり、本科研から直接の経費を支出することができず、予算は国内出張旅費や書籍などで費消することとなった。 具体的には、以下の事業を実施した。(1)永観『往生拾因』と撰者未詳の『心性罪福因縁集』について、前年度に続いて大学院生とともに出典調査・訳註を行った。(2)遣隋使を派遣した聖徳太子に関するシンポジウム「聖徳太子1400年遠忌記念 聖徳太子の実像と伝承」を主宰し、論文を執筆した。(3)奈良時代の伝説的僧侶である泰澄の伝記について、招待講演を行った。(4)慶滋保胤の『白氏六帖』受容について、国際会議で発表した。(5)中国常州大学における、ユーラシア財団後援講演会において、白居易と文人貴族についての講演をオンラインで行った。(6)中国浙江工商大学東亜文化研究院主催講演会において、大江匡衡「天台返牒」についての講演を行った。(7)西安電子科技大学高端外国専家に任命され、4月に学部で、10月から12月にかけて大学院で、「日本古代における中国文化の受容と展開」をテーマとする講義を、各16コマ行った。(8)過去に中国清華大学で発表した本課題に関するテーマで、論文を執筆した。(9)関西方面において、実地踏査を行い、博物館特別展を参看した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天台本覚思想・初期禅宗思想文献である『心性罪福因縁集』と、永観『往生拾因』に対する、詳細な出典調査と訳註を実施した。これらについては、依拠テキストの諸本を調査し、校本を作成するとともに、データベース・類書・索引・辞書などを駆使して、出典の検討を行っている。この作業が最も重要で、新たな発見に繋がるものでもあるため、一字一句に対して、慎重かつ精確な訳註を作成することを目指している。これらには多大な年月を要するが、最終年度までの完成を目指している。 慶滋保胤をはじめとする、摂関期・院政期文人貴族の作品の訳註研究も順調に進展している。北京大学との会議では、『白氏六帖』の日本における受容について、新しい見解を発表できた。聖徳太子の記念シンポジウムでは、オンライン参加も含め、約100名の参加者を得ることができた。本研究の根幹である、呉越・北宋の中国天台思想と、源信をはじめとする日本の僧俗との関係については、中国の科研費のパートナーである、浙江工商大学東亜文化研究院において、講演を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)令和5年度は最終年度であり、単行書や論文の刊行を重視しつつ、註釈のスピードを速めたい。(2)国内外の学会・シンポジウム・講演会において積極的に研究成果を公開し、また注釈・論文を執筆することで、多くの研究者・学生・一般に広める努力をする。(3)4月に、浙江工商大学における国際シンポジウムで、本課題について講演する。(4)5月に、西安電子科技大学外国語学院大学院で、「唐代長安の仏教文化と古代日本」連続講演会を実施し、本課題を含むテーマについて講義する。(4)秋に、西安電子科技大学外国語学院大学院で、本課題に関する専門的な集中講義を実施する。(5)11月に、北京大学における国際会議で、研究発表を行う。(6)12月ごろに、浙江工商大学東亜文化研究院・蔚山大学校人文大学日本語日本学科と連携して国際シンポジウム「東アジア文化交流(副題未定)」を、韓国または中国で実施する。(7)1月ごろに、龍谷大学世界仏教センター・早稲田大学日本宗教文化研究所と連携して、『心性罪福因縁集』についての国際研究集会を実施する。(8)本課題に関連して、国内外で講演会やシンポジウムを実施し、註釈・論文を公表する。
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