研究課題/領域番号 |
20K00117
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
梅田 百合香 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (20424947)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ホッブズ / トゥキュディデス / 国家 / 内戦 / 戦争 / 疫病 / 古代ギリシア / 哲学と歴史 |
研究実績の概要 |
本研究の2年目にあたる2021年度は、ホッブズの古代ギリシア認識を本格的に分析するための準備作業として、古典ギリシア語の修得に励むとともに、トゥキュディデスの『戦史』の邦訳をホッブズの英訳およびギリシア語原典と適宜照合しながら、検討を行った。また、トゥキュディデスに関する先行研究およびホッブズとトゥキュディデスの思想的な関係に関する先行研究の考察も進めた。 ホッブズとトゥキュディデスの関係についての先行研究は、主として国際関係論や現実主義に関する諸研究において展開されており、政治思想史プロパーでの研究は多くはない。とはいえ、1980年代以降、重要な研究成果もいくつか出てきており、そこではホッブズとトゥキュディデスが用いている諸概念の異同に関し詳細な比較分析が行われいる。こうした比較考察に基づき先行研究では、ホッブズの自然状態論はトゥキュディデスから影響を受けていると解釈するものが主流であるが、他方、トゥキュディデス自身の思想はホッブズのそれとは本質的に異なるとする有力な説もある。 調査・分析の結果、現時点での作業仮説として、ホッブズの自然状態論はトゥキュディデスから一定程度影響を受けていると解釈するのは妥当と判断する。しかし、ホッブズの初期から中期にかけての思想の展開、とりわけネオ・エピクロス主義に対するホッブズの立場を加味して、さらに詳しく検討する必要がある。 ホッブズの政治と宗教と科学をめぐる本研究のこれまでの蓄積に基づき、角川選書『ホッブズ リヴァイアサン』(KADOKAWA、2022年2月)を出版した。研究成果の一部を本書の解説と訳文のなかで生かし、発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、ホッブズの古代ギリシア認識を探るために、ホッブズとガッサンディ(哲学)およびホッブズとトゥキュディデス(歴史)という二つの分析対象を二つの分野において有している。この歴史と哲学という二つのアプローチによる研究成果の一部を、角川選書『ホッブズ リヴァイアサン』(世界の思想シリーズ)を出版し発表することができた。したがって、本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までに調査・分析した研究成果に基づき、ホッブズとトゥキュディデスに関する専門的な学術論文を、2022年度ないし2023年度に発表する予定である。 これにより、初期ホッブズのトゥキュディデス観を学術的に確定したうえで、ホッブズとガッサンディの思想的関係、すなわち中期ホッブズのネオ・エピクロス主義に対する立場について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により、海外渡航は原則禁じられ、国内においても外出自粛が求められたため、資料調査にかかる費用(国内および海外出張旅費)を使用することができず、書籍購入費を多く使用することとなった。資料調査は2022年度に行う予定であり、この次年度使用額はそのために繰り越し、資料調査のために使用する予定である。
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