2022年度は新出の淇園の開物学関係の著書『易原発揮』を『天理大学学報』に翻刻紹介し、原本を所持していた牛尾養庵が開物学と深く関わる人物であることを論証した。入力作業については、『易原蓍列説解』下巻、『易原指麾』巻三、四、五、追補を入力することができた。なおこの年度には皆川淇園の分家に伝わる資料の存在が明らかになり、財団法人有斐斎弘道館に寄贈されるという大きな出来事があった。資料調査のために近世京都学会で皆川淇園資料研究会を立ち上げ、研究会の一員として『近世京都』に「有斐斎弘道館所蔵 皆川文康氏寄贈 皆川淇園関係資料目録」を執筆した。また上記資料の中から『有斐斎蔵書目録』についての調査を行い、論文を執筆した。当該論文については現在学会誌に投稿中である。 2020年から始まる3年間の研究期間で、淇園の著書『易原発揮』、淇園の弟子公巌による「易原説解」「易原指麾」という二種の『易原』注釈書を翻刻することができた。刊行した論文は9本、紹介することができた資料は合計で4冊となる。 難解な『易原』は淇園の主著であるにも関わらず、ほとんど研究が進んでいない。注釈書は『易原』の全体にわたるものではないが、『易原』の冒頭「九疇」と「律運」の部分について異なる二種の注釈を紹介することができたことは意義がある。また恵広の書入から、開物学の啓蒙に努める公巌らの活動も明らかになった。 入力については、未翻刻のものも含めて、「易原説解」4冊、「易原指麾」6冊、淇園の著書「易学開物解」の計11冊分をデータベースとして完成させた。開物学の難解さの原因の一つは淇園独自の専門用語にある。開物学解釈において本データをコーパスとして活用することが期待される
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