本研究はソビエト・ポップ・カルチャーの中でも特に夭折した人気ロック・シンガー、V.ツォイ(1962-90)のイメージが現代ロシアでどのように受容され、文化的文脈を変更されていったかを究明することを目的とする。研究の結果、ツォイはロシアのリベラル派、ナショナリストさらにはウクライナ・ナショナリストにまで独自の解釈を施されアイコンとして利用されていることが明白になった。そこには、ペレストロイカ開始前に成年に達した「最後のソ連世代」の共通体験の影響がある。だが、一方でその世代がソ連後の世界で何を最優先の価値としたかがこれほどの改変の要因となった可能性があることを解明した。
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