研究課題/領域番号 |
20K00127
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北原 恵 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30340904)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 美術 / ジェンダー / 移動 / ポストコロニアル / 表象 / グローバリズム / 女性アーティスト / 植民地主義 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトの目的は、近現代の東アジアで展開された美術活動を「移動」とジェンダーの視点からとらえ直すことである。具体的には、①「人の移動」を扱った美術作品や作家 の調査、②在日コリアンだけでなく他の外国人のアート活動の聞き取り調査、③グローバリ ゼーション社会における「移動」研究の成果を美術研究に取り入れ、定住者の営為を正常と し、「移民の美術」を非日常化・周縁化する美術概念を批判的に考察し、新たな理論的枠組 みを提起する。 2020年度はコロナ禍によって当初の計画の大幅な変更を余儀なくされたが、資料収集のほか、以下の調査・発表・研究会・出版を行なった。①10月18日、朝鮮史研究会第57回大会に参加。喜多恵美子氏の発表「朝鮮民主主義人民共和国美術における女性表象」についてコメントを朝鮮史研究会会報に寄稿(2021年4月出版予定)。②11月5日、琴仙姫が日本在住の脱北者と共に行なった「朝露」プロジェクトのオンライン・シンポジウムに参加。③12月13日、2020年度ジェンダー史学会第17回年次大会において、パネル「東アジアにおけるコリアン社会のジェンダー――映像を手がかりに」(代表・山下英愛)に参加、司会とコメントを務めた。発表は、山下英愛「北朝鮮映画『わが家の物語』(2016)にみる家父長制国家とジェンダー、梁仁實「『愛の不時着』における日韓の受容」、権香淑「「ドキュメンタリー映画『血筋』からとらえる中国朝鮮族の家族とジェンダー」。 ④2021年2月28日、新しく立ち上げた「極東美術ネットワーク研究会」(Far Eastern Art Network Research Group)を開催した。発表は、白凛氏(大阪大学・学振研究員)の「在日朝鮮人美術史研究:1950年代を中心に」。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は初年度であったが、コロナ禍により出張による調査・交流を行なうことができず、大幅な計画の変更を余儀なくされた。しかし、Zoomやウェビナーなどのweb会議ツールを用いて、遠隔地の研究者との交流を図り、研究会を開催したり参加することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に交流を開始した美術史研究者たちと、さらなる連携を深め、研究会を開催する。2021年度も出張などの見通しが立たないが、資料収集を集中して行い、研究成果の論文作成と出版活動を行う予定である。 まず、初年度に計画していて実施できなかった東アジア(特に台湾・韓国)における「移動移民」を扱った表現者の聞き取り調査を、オンラインビデオ会議サービスを用いて少しずつ開始する。国内では、在日外国人の視覚表現に関する資料を収集し、準備研究会を行なう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって、国内外の出張・調査を行なうことができず、大幅な計画の変更を余儀なくされたため。2021年度は遅れている資料収集を迅速に進め、計画を立て直す予定である。まず、2021年度は、日本における移動、移民、難民の表現として、初年度にもオンラインシンポジウムなどに参加して情報を得ていた琴仙姫や藤井光などの作品やプロジェクトについて、オンラインテレビ会議システムを用いて、聞き取り調査を行なう。次に、大阪大学で2021年度から新しく始まったフェミニズムと美術に関する調査プロジェクトと連携して、調査・研究発表会を開催する。コロナによって2021年度も出張がかなり制限されそうであるが、その制約も織り込んだ計画を柔軟に立てていきたい。
|