研究課題/領域番号 |
20K00127
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北原 恵 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (30340904)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 女性アーティスト / 移動 / ポストコロニアル / 植民地主義 / ディアスポラ / ジェンダー / 難民 / 移民 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトの目的は、近現代の東アジアで展開された美術活動を「移動」とジェンダ ーの視点からとらえ直すことである。2021年度は、前年に引き続き、文献調査や聞き取りなど、大きな移動を伴わない国内での研究を中心に行った。 (1)「人の移動」を扱った美術作品や作家の調査については、谷口富美枝や長谷川春子、新井光子について、さらなる資料を発掘した。その成果を2021年12月、お茶の水女子大学で開催された「ジェンダーの視点に基づく美術史研究の現在」で発表し、2022年夏には同大学の紀要『ジェンダー研究』で出版予定である。さらに、オーストラリアのNGV(国立美術館)での女性アーティストに関する連続講座で招待発表するため(2022年5月)、当館学芸員と調査研究の交流を2021年度から開始した(特に同館所蔵の日本人女性作家の調査)。 (2)「移動」に関わる国内で2021年度に開催された展覧会調査やシンポジウムへの参加・調査・聞き取りを行なった。(例えば、「Viva Video!久保田茂子展」(国立国際美術館):「田部光子展 希望を捨てるわけにはいかない」(福岡市美術館):「在日朝鮮人美術史に見る美術教育者たちの足跡展」(同志社大学)他、呉夏枝・金明和など在日コリアン美術家の展覧会調査。 (3)移動と美術に関して理論的な探求をする過程で、東欧圏での移動とアートに関する動向を調査することになり、専門家へのインタビューをまとめて公開した(「プロテスト・アートから考えるベラルーシーー創造性と粘り強さ」)。 (4)20世紀半ばから現在にかけての日本の女性美術家の歴史をまとめて論文にした(2021年度に日本語/2022年度に英語で出版)。このように、予定していた国外での調査は全く行うことが出来なかったが、その代わりに成果を着実に国内外で発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、COVID-19のために前年度に続いて、当初計画していた海外調査を全く行うことができず、国内でも大きな移動を伴う調査は実施できなかった。そのため方針を変更して、文献資料の再調査と、国内外での成果の発表に力を入れた。それゆえ、大きな出費に迫られることはなかったが、国外調査については大幅な計画の遅れが生じざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19による移動の制限については、今後も予断を許さない状況ではあるが、調査の一部については、インターネットを駆使して切り替えるなどの対応を継続して行う予定である。2022年度は、国境を越えて大きな移動をした美術家の歴史と活動を、引き続き調査研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き、2021年度もCOVID-19のために海外調査が全く行えず、国内も最小限の移動に留まらざるを得なかった。2022年度も依然として予断を許さない状況であるが、調査の一部については、インターネットを駆使して行う。また、新しい状況として、世界中で大量に発生している「移民/難民」についての基本的知識を得て、彼らのアートや表象を調査する予定である。
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備考 |
(1)は、研究代表者の主宰するHP. (2)は、2021年3月に結成した新たな研究プロジェクトのFaceBook。
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