最終年度は、「日本における和声学導入期におけるリーマンの音楽理論の位置づけ」というテーマで研究を進めた。具体的には、明治期から昭和期にかけて日本で出版された和声学の書籍や、同時期に音楽雑誌に発表された記事を対象に、ドイツの音楽理論家フーゴー・リーマンに言及しているものを網羅的に調査した。本調査に際しては、全国の大学図書館や東京文化会館音楽資料室、国立国会図書館デジタルコレクションなどを活用した。そのうえで、これらの文献史料を収集して一覧にし、文献の形態やリーマンにどのように言及しているかについてに沿って特徴を抽出した。 これにより、日本人がリーマンの音楽著述、とりわけ彼の音楽理論の何を受容し領有したのか、すなわち西洋音楽学に対する日本人の受容の一端を、「音楽理論」という一事例から明らかにした。最終的に、東京藝術大学に所蔵されている授業史料等を対象とした、研究協力者による同様の調査の結果とあわせみることで、複数の媒体を通して受容のありさまを多角的・総合的に検討することができた。 研究成果は、国際学会および国内学会で研究発表を行い、論文にまとめて投稿したほか、研究協力者とともに日本音楽学会支部横断企画として学術シンポジウム&コンサート「近代日本と西洋音楽理論」を開催した。 さらに、2021年度から進めていた「リーマン生前の音楽理論と音響物理学・音響心理学との関連」に関する研究調査結果と、同年度に国内学会で開催した、音楽学と心理学の関わりに関するシンポジウムを発展させた書籍の編集作業を年間を通して進め、年度末に完成させた。
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