本研究は、田中栄三旧蔵資料の整理、調査にもとづき、主に以下の二点を明らかにした。第一に、田中が監督として活躍した日活向島撮影所の京都移転をめぐって、田中の自筆ノート等の分析をおこない、移転の理由が関東大震災以前の日活の経営方針の転換にあったことを明らかにし、その成果を論文として発表した。第二に、過去に研究成果の一部として発表した論文を、新たな田中栄三旧蔵資料の分析を踏まえ、田中の義父にあたる鈴木要三郎の重要性等に関して加筆し、さらに新派映画研究の現代的意義を考察した序論も執筆したうえで、共編著書に収録し刊行した。
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