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2021 年度 実施状況報告書

ベトナム音楽「ボレロ」再興にみる言語的アイデンティティ

研究課題

研究課題/領域番号 20K00142
研究機関立命館アジア太平洋大学

研究代表者

田原 洋樹  立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (60331138)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード母語継承 / ボレロ / 在外ベトナム人
研究実績の概要

新型コロナウイルスは沈静化せず、世界的な感染拡大に歯止めがかからなかった。2020年度に引き続き、21年度もベトナムおよびアメリカへの渡航ができなかった。また、かねて予定していたベトナム人ボレロ歌手の来日招聘にも全く目途が立たないままに1年が終わってしまった。つまり、生身の人間の往来が完全に断絶したまま2年が経過してしまった。
ただ、遠隔会議ソフトを用いた研究打ち合わせや意見交換が便利になったことにより、研究上のパートナーと日常的に接触できた。また、外国で開催される学会や研究会へ極めて容易に参加できるようになった。南カリフォルニアでは、20年度に続いて、21年夏にもベトナム系子女に対する継承語教育に従事する言語教育関係者や移民第一世代および第二世代およそ500人が参加する学会が開催された。主催者の提案に従って、「外国語としてのベトナム語」「外国人の目に映るベトナム人、ベトナム文化」について基調講演を行った。
さらに、コロナ禍で日本人のベトナム渡航が途絶えた今こそ、日本国内に40万人以上滞在するベトナム人とのつながりや交流を活発化させるべく、ベトナム語表現集の執筆を開始した。
なお、21年度末から新年度にかけて、ベトナムも日本も新たな出入国方針を打ち出し始めた。これによれば、22年度の早い時期に日越間の往来が可能になる。そこで、22年秋にボレロ歌手の来日招聘と研究発表を実施できるように、事務的な手続きを開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画にあったベトナム人ボレロ歌手の招聘がコロナ禍の出入国制限によって延期したままになっていることが、遅れの主たる理由である。これについては、22年度での取り返しが可能になりそうである。
この間、ボレロの歴史に関する文献調査を実施した。また、オンラインシステムを活用して、ベトナムやアメリカ在住の音楽関係者にインタビューを行った。歌手は、人前で歌うことが不可能となって現金収入がなくなり、都会での生活をいったん止めて、出身地や実家に戻るケースが多かった。他方、音楽家では、自宅待機中に創作効率を高めて新曲を書きあげるタイプと、人的交流が断絶して創作意欲を失ってしまった者に分かれた。皮肉にも、インタビューは、今まであまり語られることがなかった、音楽家や歌手の生きざまなどの精神面に直接触れることができた。

今後の研究の推進方策

既に述べたように、日本およびベトナム双方の出入国政策に大きな変更があり、22年度にはボレロ歌手の来日招聘が実現しそうである。
新型コロナウイルスの世界的感染拡大は誰にも予期できなかった事態である。そこで、当初計画には盛り込んでいなかったが、歌手や音楽家たちはコロナ禍をどのように乗り切ったのかについての語りを取り込んでみたい。そもそも、本研究テーマの端緒は、人間が裸一貫の移動で持ち運べるものとしての母語、音楽という点にあった。負の側面とはいえ、ウイルスもまた人間が運んでしまうものである。「移動する存在」としての人間を、今まで以上に意識することが可能になった今、ボレロ研究にも新しい視点が生まれた。
また、外交関係者やベトナム人宗教家が助言してくれた「音楽による精神の救済」の意義は、2年のコロナ禍でいっそう高まったと言える。生の音楽を共有することによる精神的な潤いが枯渇していた分だけ、本研究の社会的役割が高まっているので、研究協力者や在日ベトナム人社会と連携しながら研究を遂行したい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍による出入国制限で、ベトナム人ボレロ歌手の来日招聘が実施できなかったので招聘旅費や謝金の支出がなかった。翌年度分の助成金と合わせて、当初目的である本件招聘に充当する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Nguoi Nhat tim den Viet Nam2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroki TAHARA
    • 学会等名
      Khoa Su pham Viet Ngu
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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