研究課題/領域番号 |
20K00144
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
平野 恵美子 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (30648655)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア・バレエ / アンナ・パヴロワ / マリウス・プティパ / 魔法の鏡 / 帝室劇場 / バレエ・リュス / ディアギレフ / ミハイル・フォーキン |
研究実績の概要 |
本年度は7月に、博士論文にロシア・バレエ前史一章分を書き加え、加筆補正した『帝室劇場とバレエ・リュス』(2020、未知谷、480頁)をようやく刊行することができた。日本ではほとんど活字になっていない帝政ロシア・バレエ史を詳細に著したことに加え、マリウス・プティパの最後の振付上演作品で、現在は失われたバレエである《魔法の鏡》について、楽譜や当時の批評などの調査を緻密に行なった結果、作品の実像や受容についてより明らかにすることができた。またこの成果により、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞を贈賞されるなど、高い評価を得た。 この他に、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター(SRC)との共同研究として、英国ヴィクトリア・アルバート博物館の世界的に著名なダンス・キュレーターであるJane Pritchard氏を招き、「アンナ・パヴロワ:帝室バレエから世界へ "Anna Pavlova. From Imperial Ballet to the World"」というタイトルで、オンライン講演会を開催した。コメンテータは同じく英国の著名ダンス・ジャーナリスト、Nadine Meisner氏が務めた。SRCの講演会は、通訳無しで行われることが多いが、今回はバレエやアンナ・パヴロワという、一般の人にも関心の高いテーマだったため、日英通訳をつけた。これによって、国内外から50名近い参加者があり、研究の成果を社会に公開し還元することができた。また、Pritchard氏の講演会を日本人に向けて開催できたことは、この課題の目的であるバレエ研究の国際的ネットワークの構築に向けて大きな一歩となった。アンナ・パヴロワの国境やジャンルを超えた幅広い活動は、ロシア・バレエのグローバルな伝播の一端を示している。一般の愛好家から有名なバレエ研究者まで多くの参加者と活発な議論を行うことができて非常に有意義だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はコロナ禍の影響で計画の大幅な変更を余儀なくされた。まず、英国ヴィクトリア・アルバート博物館のダンス・キュレーターであるJane Pritchard氏を日本に招聘し、札幌・東京・関西等で講演会を行なう予定だったが、来日は叶わなかった。しかしながら【研究実績の概要】でも記した通り、オンラインでの講演会を開いて、Pritchard、Nadine Meisner両氏との協力関係を強化することができた。英国は二度のロックダウンに入り厳しい外出制限もあって、講演者の研究活動も縮小されたため、講演の内容も変更された。だが、アンナ・パヴロワという一般にも馴染みのあるテーマでありながら、パヴロワの知らざれる活動に広く光を当てたため、その一つ一つが活発な議論に発展し得るものとなった。 研究代表者本人も、海外での研究調査や国際学術会議での報告を予定していたが、渡航は叶わなかった。また、オンラインでの開催予定だった会議ですら、主催者側に新型コロナウィルスの感染者が多数出たため、延期されたものもあった。しかしながら、オンラインの開催が増えたことにより、これまでより多くの海外の報告を聞くことが出来たのもまた事実である。今年度も、帝政バレエからバレエ・リュスに至るまで、多くの新しい研究成果に触れることができた。また、これまでも良好な協力関係にあったモスクワの国立バフルーシン演劇中央博物館の国際学会では、「報告無しの参加者」として公式プログラムに名前が掲載され、ロシアでの研究基盤は確実に形成されている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、昨年開かれる予定だったICCEESモントリオール大会がオンラインに移行して開催される。そこでJane Pritchard、Nadine Meisner両氏の他に、Elizabeth Kendall、Tatiana Boborykina各氏らとともにパネルを組んで、ロシア・バレエに焦点を当てた研究発表を行う。多くの情報交換が行われることを期待している。2021年度もPritchard氏、Roland J. Wiley 氏、Simon Morrison氏、Sergey Konaev氏らの招聘や、研究代表者自身の国際学術会議での報告を積極的に推進して行く予定だが、おそらくオンラインになる可能性が高い。前年度に蓄積された経験を踏まえて、効果的な活動計画を立てて実施したい。またこの間に、国内のアーカイヴの利用を増やす。また、ロシア・バレエ、とりわけバレエ・リュス作品の日本への伝播と発展について調査し、国内外に発信して行きたい。兵庫県立芸術文化センターとも協力して、薄井憲二バレエ・コレクションを利用した展覧会なども企画・開催し、研究成果の社会への公開と還元を一層目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】で述べた通り、本年度はコロナ禍の影響で計画の大幅な変更を余儀なくされた。招聘予定だった海外の研究者たちの来日が叶わなかった。また、研究代表者本人も、海外での研究調査や国際学術会議での報告を予定していたが、渡航できなかった。このため、旅費の使用額が予定より少なかった。
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