研究課題/領域番号 |
20K00146
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
西間木 真 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (10780380)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 音楽についての対話 / 中世音楽理論 / 音楽写本 |
研究実績の概要 |
当初予定していた欧米図書館での調査研究が実施できなかったため、まず本研究で準備している新エディションに基づき『音楽についての対話』の日本語訳を作成した。その際、文の区切りや句読点などについて見直した。またテキストの伝搬の一つの経路を明らかにする目的で、9写本で『音楽についての対話』の「序文」として伝えられている小論 Petistis obnixe について一次史料の校合および見直しを行った。Petistis obnixeはMichel Hugloが1971年に批判的校訂を発表している。そのため当初は伝播と受容の手がかりとなるヴァリアントの確認に留めるつもりであったが、今回の作業を通してHugloのエディションではいくつかの単語が欠落していることが確認されたため、改訂版の作成まで実施した。 さらに今後、南フランスおよびアングロ=ノルマン文化圏経由の受容について検討する下準備として、『音楽についての対話』と直接的な関連はないが、フランス国立図書館ラテン語7211写本134v-144v葉に収められているレオムのアウレリアヌス『音楽論』を校訂した。この異本のトナリウス部に書き加えられ、アキテーヌ式ネウマで記譜されている曲例を、『音楽についての対話』のフランスおよびイギリス系の写本にみられる曲例と比較することで、『音楽についての対話』のフランス語圏における受容について新たな知見が得られると期待される。アウレリアヌスのlat. 7211版については、アウレリアヌス新エディションの付録として近く出版される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに校合した58写本に基づいたapparat critique の編集に着手したが、写本のグルーピングを見直す必要から、作業を中断し、校合表を見直すことにしたため。
|
今後の研究の推進方策 |
写本の伝承研究が進んでいるアレッツォのグイド写本の場合を参照しながら、ヴァリアントに基づいて写本のグループ分けを見直し、秋口までにはapparat critiqueの編集を終えたい。
|