本研究は、ドイツ語圏モダニズムの芸術人形劇をめぐる言説や舞台実践が、ドイツ語圏モダニズムの中で果たしている意義、および「人間」と「モノ」をめぐる関係の変容とどのような関連を持っていたのかを明らかにすることを目的としている。 今年度は、論文「ドイツ語圏の芸術人形劇における異文化受容-クレイグ、トイバー、アルプ、テシュナー」が、『ドイツ文学』166号(日本独文学会)の査読付き論文として掲載され、これまで日本でほとんど知られていなかった、ドイツ語圏の芸術人形劇についての情報を幅広く提供することができた。また海外で収集した資料の分析も続けており、今後、論文や資料紹介の形で発表することを予定している。また、上記論文の元になった発表によって、『現代人形劇100年』を大会テーマとした日本人形玩具学会第35回研究発表大会に基調講演者として招待され、「エドワード・ゴードン・クレイグの『超マリオネット』と日本の人形劇」という題で、芸術人形劇にグローバルな影響のあったクレイグについて講演した。本科研が科研研究グループ「歴史的アヴァンギャルドとジェンダー」および愛知県芸術劇場と共同で開催している「ダンス・スコーレ特別講座シンポジウム」は今年で4回目を迎え「踊る文字-アヴァンギャルドが見た文字と身体」をテーマに開催した。ここでは、「趣旨説明」として、文字の身体性や物質性への着目、ダンスの動きの図像化、記号化、文字化への試み、および踊る身体と周囲の空間やモノ、人形などとの関連について発表を行った。本シンポジウムは、各分野の研究者、学生、一般市民の方、合わせて約100名の参加者を得て、研究成果を広く社会に還元することができたと考えている。なお、本研究の成果の一部を、勤務校での講義や、他大学における集中講義において取り上げ、教育活動にも還元することができた。
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