研究課題/領域番号 |
20K00150
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
劉 文兵 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (70609958)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本映画の受容 / 日本のコンテンツ / イメージの反転 / リメーク / ノスタルジー / 文化翻訳 / F・デーヴィス / ホミ・k・バーバ |
研究実績の概要 |
初年度において、著書(共著・分担執筆)1冊、論文2編、研究発表1回の研究成果が挙げられた。「論考:岩井俊二監督作品は中国でどう見られてきたか」(夏目深雪編『岩井俊二「Love Letter」から「ラストレター」、そして「チィファの手紙」へ』 、河出書房新社、2020年)を執筆し、北野武や岩井俊二、是枝裕和、新海誠の作品が中国においてどのように受け入れられてきたのかを俯瞰的にまとめた単著『中国社会の変遷と日本の映画』(弦書房、2021年6月出版予定)の執筆も完成した。さらに日中映画交流に携わった韓延監督(中国版『カイジ 賭博の黙示録』の実写版映画の監督)、周迅(岩井俊二が演出を手掛けた中国映画『チィファの手紙』の主演女優)、黎涓(大林宣彦が演出を手掛けた日中合作映画『北京的西瓜』の主演女優)、高橋洋子(中国で大ヒットした『サンダカン八番娼舘』の主演女優)など、多くの映画人に取材を行い、貴重な映画史的証言を得た。 日中が戦争状態になる前、日本映画が初めて中国で見られるようになった頃から、北野武や岩井俊二、是枝裕和等の作品や新海誠のアニメなど現代の作品が簡単に観られるようになった現在の状況も加えて、中国において日本映画がどのように受け入れられてきたのかを検証した本年度の研究を通じて、中国側から見た日本の映画監督の系譜をたどることができた。これらの本年度に行われてきた作業によって、両国の映画交流の歴史を再構築するとともに、映画をつうじた今後の文化交流の可能性を探ることが可能となったのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
資料収集に加え、多くの映画人への取材を通じて得た貴重な映画史的証言を得た。それに基づいて、「論考:岩井俊二監督作品は中国でどう見られてきたか」(夏目深雪編『岩井俊二 「 Love Letter」から「ラストレター」、そして「チィファの手紙」へ』 、河出書房新社、2020年)を執筆し、さらに、北野武や岩井俊二、是枝裕和、新海誠の作品が中国においてどのように受け入れられてきたのかを俯瞰的にまとめた単著『中国社会の変遷と日本の映画』(弦書房、2021年5月出版予定)を完成した。日本の映画監督の系譜をたどることをつうじて、日中映画交流史を再構築することで、日中映画史研究に国際的な貢献を加えることができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
近年の中国における日本映画の受容に関する、前年度の研究成果を発表していくとともに、中国における日本のコンテンツのリメークについて重点的にリサーチをおこない、論文執筆に着手する予定である。 日本のコンテンツである『家族はつらいよ』、『ナミヤ雑貨店の奇跡』、『深夜食堂』などがそれぞれ中国映画として製作されたが、これらの日本映画のリメイクが一種の「文化翻訳」だとすれば、それらが中国へ「翻訳」されていく過程における日本と中国の間の政治的・文化的パワーバランスの複雑な位相を、〈宗主国〉VS〈植民地〉、〈西洋〉VS〈東洋〉、〈見る〉VS〈見られる〉といった従来の二項対立的な関係としてとらえることが不可能である。というのは、日本映画の放映権を買い取り、日本発のコンテンツをリメイクする中国は、資本や市場において優位に立っているからである。新しい文化的事象を、新たな視点から考察することが急務である。本研究は、ホミ・K・バーバによる「文化翻訳」の理論をもちいて分析をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、中国における日本映画の受容の現状について研究してきた。その研究結果を学会などで発表する予定だったが、コロナの影響で実現できなかった。次年度使用額が生じたわけである。 次年度において、前年度の研究成果を発表するとともに、中国における日本コンテンツのリメークという新しいテーマに取り掛かる。次年度使用額と当該年度以降に請求した助成金を使用し、学会発表やリサーチのための旅費、インタビュー対象者に支払う謝礼、研究所の購入、物品購入に使用する予定である。
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