研究課題/領域番号 |
20K00151
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小屋敷 琢己 琉球大学, 教育学部, 教授 (20404551)
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研究分担者 |
高科 真紀 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (10723207)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 沖縄写真 / 沖縄経験 / アーカイブズ |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカによる占領、日本への復帰など、戦後の変容する沖縄社会をカメラとペンで記録した阿波根昌鴻と比嘉康雄を対象に、写真という「表現活動」の背景にある彼らの〈沖縄経験〉に焦点を当て、表象文化の文脈の中で戦後沖縄写真の特質の一端を明らかにすることを目的とする。研究の遂行にあたり、【第1課題】アーカイブズ資源化のための整理、【第2課題】<沖縄経験>の検証、【第3課題】アートの場への還元の3つの課題を設定した。 初年度となる本年は、【第1課題】としては、わびあいの里(沖縄県伊江村)及び比嘉康雄アトリエ(沖縄県沖縄市)にて、阿波根昌鴻と比嘉康雄の資料を対象とした整理・保存作業の実施を計画していたが、コロナ禍のため当初の予定よりも大幅に制約された。比嘉康雄資料に関しては、感染状況に留意しつつ出来る限りの感染症予防対策を講じることで実施できたものの、阿波根昌鴻資料については、離島である伊江村への渡航制限もあり、今年度の実施に至らなかった。ただし、阿波根昌鴻資料に関連する資料を、北九州市立文学館にて火野葦平資料調査として実施することができた。 【第2課題】に関しては、資料調査で得たデータに加え、これまでに収集してきた関連資料や著書、写真集、新聞記事などについて内容分析をおこなってきた。また、その一部の成果を、学会やシンポジウム等で報告した。また、〈沖縄経験〉に関連する上野英信による『眉屋私記』の資料調査も実施した。 【第3課題】については、「沖縄アジア国際平和芸術祭」の関連企画として、『沖縄の縮図 伊江島の記録と記憶―阿波根昌鴻写真展』(佐喜眞美術館)及び『イザイホーの魂/久高のニガイ 比嘉康雄・上井幸子写真展』(那覇市民ギャラリー)を実施した。この企画に関しては、小屋敷による新聞記事での紹介を掲載することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初予定していた計画からの変更が余儀なくされた。このような状況下でありながらも、コロナ感染症予防対策を講じながら比嘉康雄資料の整理・保存作業では資料のデジタル化に注力したことにより、デジタル画像を活用して沖縄経験の検証のための内容分析を進めることができた。得られた研究成果は、2つの写真展の企画に携わることでアートの場へ還元し、広く発信することができた。加えて、本土側の沖縄写真関連資料に着目することで、作家資料を取り巻くアーカイブズ資源化における課題や、〈沖縄経験〉の検証を深化させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染状況を配慮しつつ感染対策を十分におこないながら、調査研究を実施していくことを計画している。 【第一課題】については、わびあいの里(伊江村)及び比嘉康雄アトリエ(沖縄市)において、調査場所も配慮しつつ実施を複数回計画する。 【第二課題】については、特に県外の研究機関等に所蔵されている資料を中心に、関係者との面談もおこないながら実施を計画する。 【第三課題】については、写真家グループ「まぶいぐみ」(代表・國吉和夫)らと連携しながら、アートイベントや写真集の作製などを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、当初予定していた調査旅行等が縮小されたため。また、生じた費用は、次年度の調査旅費や物品等の費用に充てるように計画する。
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