研究課題/領域番号 |
20K00153
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
桑原 規子 聖徳大学, 文学部, 教授 (90364976)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日系アメリカ人 / 日米美術交流 / 戦後日本美術 / 国際化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1945年から1960年代前半の約20年間に、在日・在米の日系アメリカ人美術家が芸術作品の制作とは別に、日本の美術家のためにいかなる活動を行っていたのかを明らかにし、彼らの支援が戦後日本美術の復興と国際化にどのように繋がったのかを解明することにある。そのために、令和3年度は以下のような資料収集・調査・研究発表を行った。 国内では、2021年10月に青森県立美術館が所蔵する小林ドンゲ資料の調査を行った。小林ドンゲは内間俊子と親しく交流した銅版画家であり、小林のアルバム等の資料を詳しく調べることによって1950年代に存在した女流版画協会の活動内容を知ることができた。また、同じく2021年10月に実施した秋田市赤れんが郷土館所蔵の勝平得之資料の調査では、勝平と占領期日本に駐留したアメリカ人との交流が明らかになると同時に、その仲介役としての内間安セイの位置も明確となった。さらに2022年2月には丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で猪熊弦一郎資料の調査を行った。猪熊は1955年に渡米し、ニューヨークで活動した美術家だが、1950年代から1960年代にかけてニューヨークを訪問、滞在した日本人美術家のサポートをしており、その実態が判明した。また猪熊は1959年に帰米した内間安セイ・俊子とも親しかったため、彼らのニューヨークでの活動の一端を知ることもできた。 海外調査については新型コロナウイルスの影響で渡米ができず、調査も不可能となったが、オンライン会議の実施やメールによる資料交換により、研究の活性化を図った。海外調査ができなかったため新たな論文執筆はできなかったが、2021年3月にフロリダ州リングリング美術館で開催された斎藤清展のカタログに寄稿した英語論文を日本語に翻訳・改稿して、聖徳大学言語文化研究所の『論叢』に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新型コロナウイルスの影響で、海外調査が計画通りに実施できなかった。予定していたニューヨークでの作品・資料調査ができなかったことが研究の進展を妨げる大きな要因となった。 ただ、青森県立美術館所蔵の小林ドンゲ資料、秋田市立赤れんが郷土館所蔵の勝平得之資料、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館所蔵の猪熊弦一郎資料など、国内の資料調査ができたので、新しい情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進するに当たっては、以下の方策を考えている。 1.できれば2022年度内にニューヨークの調査を行いたいところであるが、新型コロナウイルスの感染状況次第では海外調査が2023年度になる可能性もある。したがって、国内での資料収集を優先的に進めておく。 2.ニューヨーク在住の作家遺族からメールを通じて資料を提供して頂く。 3.オンラインで海外研究協力者・国内研究協力者と定期的に会議を行い、研究情報を共有すると同時に研究の活性化を図る。 4.これまでの調査を踏まえ、論文発表、口頭発表を行う。現在、2023年秋にニューヨークで実施予定の展覧会のカタログに、1950年代~60年代の日米美術交流に関する論文を寄稿することが決定しているので、今年9月までに執筆を終える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度同様、令和3年度に予定していたニューヨークでの調査が新型コロナウイルスの影響で実施できなかったため、次年度使用額が生じた。令和4年度内に可能であれば海外調査を実施し、その海外渡航費に使用する予定である。不可能な場合は、研究期間を4年から5年に延長することも想定している。
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