研究課題/領域番号 |
20K00156
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小菅 隼人 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 教授 (40248993)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 舞踏 / 北方舞踏派 / 鈴蘭党 / 土方巽 / ビショップ山田 / 雪雄子 / 現代演劇 / Butoh |
研究実績の概要 |
2021年度は,前年度に引き続き,海外出張,国内出張を十分に行うことができなかった.しかし,研究テーマである「暗黒舞踏を芸術的カテゴリーとして確立するための実証的研究」を実現するための当事者への聞き取り調査に基づく論文を発表することができた. 当初から研究計画にあるように,本研究では,北方舞踏派およびその派生グループである鈴蘭党に注目している.その構成メンバーである,長谷川希誉子と鈴木美紀子には,コロナウイルス感染症に万全の注意を払いつつ,アシスタントと共に直接対面し,舞踏に入っていくきっかけ,社会の舞踏に対する視線,北方舞踏派を離れてからの生活など多岐にわたって話を聞くことが出来た.その成果は,「北方舞踏派・鈴蘭党研究(1)―舞踏家緒環毘沙(長谷川希誉子)に聞く」これは『慶應義塾大学日吉紀要:言語・文化・コミュニケーション』第53号に結実している.また鈴木美紀子については,すでに,聞き取り調査が終わり編集が進行中で2022年6月に論文として刊行される予定である. さらに,暗黒舞踏の創始者土方巽の最後の弟子である正朔に話を聞くことができた.正朔には,慶應義塾大学の「舞踏学序説」で学生の前で対談,質疑応答もすることができた.舞踏草創期の土方巽のメソッドを知る上で貴重な資料となった.その成果は,「土方最後の弟子―舞踏家正朔に聞くー 」『慶應義塾大学日吉紀要H-36:人文科学 』第36号,として結実している. 1970年代から80年代には,演劇界の新しい潮流を代表する劇団として「夢の遊眠社」が出現した.演劇界という大きな視点から見た時の舞踏の位置づけを見極める上で,遊眠社を実質的に運営した高萩宏にインタヴューが出来た.その成果は,「コロナ時代の演劇について(2)―演劇プロデューサー高萩宏に聞く― 」『日本演劇学会紀要:演劇学論集』第72号として結実している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症流行により,国際学会への参加,国外出張が制限されたことで,国際的なネットワークが活用しにくくなったことによる遅れが顕著である.このことについては2022年度は,国際学会の対面開催も可能になり,人事交流も進んだことから改善されるものとみられる. 他方,この研究の中心になる,北方舞踏派と鈴蘭党の調査は,思ったより進んでいる.これは,舞踏家による繋がりを活用できたことによる.ビショップ山田から,長谷川希誉子へ,長谷川から鈴木美紀子へと広がりインタヴューを実行できたことが,肯定的な要因である.但し,2022年3月に予定していた大須賀勇のインタヴューが大須賀の事故のため延期になったことは遅れの一要因である.
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今後の研究の推進方策 |
①この研究の主要な方法である,国際的なネットワークの活用と発信については,2022年のレイキャビック(アイスランド)でのパネル応募が採択されたことにより,新たなネットワークの構築が期待される.また,12月には英国ケンブリッジでの北方舞踏派の代表作『塩首』についての研究会を慶應義塾大学アートセンターと共に計画している. ②インタヴューについては,舞踏草創期の代表的舞踏グループである白虎社の主宰者である大須賀勇へのインタヴューについて内諾を得ており,大須賀の体調回復を待って実行する予定である.また,鈴蘭党のメンバーである佐々木智枝へのインタヴューによって鈴蘭党の実態がさらに明らかになることが期待される. ③加えて,これまでの10本以上の対談をまとめ,単行本として刊行する準備を進めたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年3月に予定していた大須賀勇へのインタヴューが,大須賀の交通事故により2022年度に延期になったことによる.この事項については,大須賀の回復を待って2022年度内に実施する予定である.
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