研究課題/領域番号 |
20K00157
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
津上 英輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (80197657)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジローラモ・メーイ / 『古代旋法論』 |
研究実績の概要 |
メーイ(Girolamo Mei, 1519-1594)のラテン語主著『古代旋法論(De modis)』の英語訳書の出版を目的として,2021年度の研究では,まず第1巻から翻訳を始め,2022年3月には全4巻の翻訳を終えることができた.その際,各巻ごとの訳稿完成の都度,英国Oxfordの古典学者Dr. Leofranc Holford-Strevensの校閲を受け,ラテン語解釈と英語表現について修正提案を受けた.第1巻の翻訳においては,1原語1訳語を原則として,厳密な直訳を目指したが,Holford-Strevens氏の個別的指摘を通じて,その徹底が不可能かつ不要であると考え直すに至り,第2巻からはある程度の意訳を許容した.第4巻でかなり大胆な意訳を試みたところ,逆にHolford-Strevens氏から直訳の提案を受ける場面もあった. 翻訳には,対象を厳密に古典期のラテン語文献に限るThe Oxford Latin Dictionaryを使い,メーイの古典的語法からの逸脱にも目を配った結果,たとえば古典的には「打ち砕く」を意味するdiscutereが中世的な「論ずる」の意味で用いられているというような,注目すべき語法がいくつも見つかった. 翻訳の途上で,個別的な出典注をある程度整備し,また前著Girolamo Mei: A Belated Humanist and Premature Aesthetician(2021年2月)で論じ残したGafurius, Glareanusの旋法論への批判(第3巻)やプラトーンの旋法論の解釈(第4巻)のような問題にも,ある程度の見通しを付けることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度中に,『古代旋法論』全体の英訳第1稿を,信頼できる古典学者の校閲つきで仕上げることができたほか,出典注とメーイのラテン語語法についての注をある程度整えられたこと,大きな内容的注釈に一定程度の見通しを持てたことは,予定どおりの進捗と言うことができる.
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今後の研究の推進方策 |
『古代旋法論』全4巻の第1稿は完成したものの,翻訳の方針にばらつきがあるので,もう一度全体を通しての見直しが必要である.2022年度の研究はそれに宛て,年度末までに完成稿を仕上げる. それと並行して,出典注のさらなる整備と内容的注釈の充実を図り,英訳書出版に備える. いずれの部分についても,Holford-Strevens氏の校閲を受け,ラテン語解釈としても,英語表現としても遺漏無きを期す.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は,コロナ禍のため,予定していたイタリアおよびフランスの図書館での調査が実行できなかった.そのため旅費が全く支出できなかった
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