研究課題/領域番号 |
20K00163
|
研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
前川 志織 国際日本文化研究センター, 研究部, 特任助教 (80805664)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | デザイン史 / 広告 / 嗜好品 / 間メディア性 / 視覚文化論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、視覚文化論の観点から、戦間期日本における広告表現、とくに嗜好品の一種である洋菓子の広告が、挿絵・漫画、写真・映画という隣接する大衆的な視覚メディアといかなる関係をもったかを立体的・動態的に考察することである。2020年度は、コロナ禍の影響のため海外を含めた資料所蔵機関への出張調査といった当初計画を変更し、「挿絵・漫画」関連資料の収集に重点を置いた。その結果、製菓会社各社が制作した、童画や児童漫画と広告との間に表現の流動性がみられる貴重な資料を収集した。また、本計画に関連する分担執筆や口頭発表も行った。上記に関連する研究実績は次の通りである。 (1)分担執筆:「戦間期東アジアにおける森永製菓の新聞広告と広告戦略」(ことばとイメージの連携を菓子広告に見出し、東アジアに広がった日本の支配地での商品宣伝において、本土で使用した西洋のモダンな表現をベースに現地に応じた調整を施したことを考察した。) (2)コラム執筆: 「画家と画工-広告の図案制作者たち」(明治後期から昭和初期にかけてのグラフィック広告の図案制作者のあり方とその変遷を辿りつつ、それらの広告図案がしばしば印刷メディアにおける最新の表現技法を共有したことを考察した。) (3)解題執筆:「解題「ビラ・チラシのナンセンスさ」(石子順造)」(近代の宣伝ビラの両義性から大衆の知覚のありかを探る石子の論考を解説した。) (4)研究発表:「戦間期日本のチョコレート広告にみる「少女」の身体表象――ポスター《森永ミルクチョコレート》(1937年)を手がかりに」(ポスター《森永ミルクチョコレート》(1937年)を手がかりに、チョコレート広告ではどのような女性の身体が表象されたのか、その身体表象はどのように形づくられ、「チョコレートの視覚化」とどのように結びついているかを、タイアップ映画との関連などを手がかりに検討した。)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響のため出張調査などの当初計画を変更したものの、「挿絵・漫画」関連資料の収集に重点を置いた結果、貴重な資料を多数収集することができ、その整理と分析に着手したことにより、当初の目標を達成できている。よって、研究が順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
洋菓子の広告デザインと「挿絵・漫画」との間メディア性について、2021~22年度には、2020年度に収集した関連資料の電子化やメタデータ入力による資料の整理とその分析を行うとともに、広告の文化的・社会的意味の変容との関連性を考察し、 得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う予定である。 洋菓子の広告デザインと「写真・映画」との間メディア性について、2021年度において、コロナの状況を鑑み、海外を含めた遠方の資料所蔵機関への出張調査の代わり、近隣の教育研究機関などを利用した関連資料の収集・閲覧・調査に重点を置き、資料の電子化やメタデータ入力による資料の整理とその分析を行う。その上で、2022年度にかけて、各種雑誌における写真表現からの流用や映画上映催事とのタイアップ事例などを通して、広告の文化的・社会的意味の変容との関連性を考察し、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う予定である。 併せて、欧米の菓子産業の動向や広告に関する資料収集とその分析、戦間期と戦時下における文化的連続性を視野に含む東アジア地域での日本製洋菓子商品の広告活動に関する考察を進めるとともに、広報誌の投稿欄や関連雑誌の読者欄の検討などにより、受容者層の詳細な検討も行う。これに関連して、コロナの状況を鑑みつつ、東アジア圏における広告表現の間メディア性の問題に注目し比較検討する研究会を企画し、本研究課題についての議論の場を設けたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた該当資料の購入費が、想定より安価であったため、差額が生じた。次年度使用額は、資料購入費に充当する予定である。
|