研究実績の概要 |
2022年度において、勤務先の業務過剰および美術史学会事務局長の重職を負担することとなったため、海外研究ができなかった。そのため、以下の2点に重点を絞って調査した。 第一に、パルミジャニーノによるエロティック描写、特に素描における例を以下の観点から分類し、その描写上の特性をデータベース的に網羅する作業を続けた。①性行為およびそれに関わる神話的主題(例 マルスとウェヌス) ②ファルス(男性器)を拡大したり、強調したりする素描(例 いわゆる「ガニュメデス)) ③性器を拡大したり、他の場面の中に挿入して強調する素描(例「サバトに向かう魔女」) 続いて、パルミジャニーノが描いた注文作品および公的作品におけるエロティックな描写および性的部位の強調を再検証した。その検証において、以下の重要な(しかし見過ごされがちな)先行研究を見いだした。James Grantham Turner, An Erocic "Annunciation" by Parmigianino or Bedoli, Source: Notes in the History of Art, Vol. 29, No. 2 (Winter 2010), pp. 21-26. この研究による指摘を検証することが新たな課題となった。 他方、同時代におけるエロティック文学の重要例でありかつアクセス困難な著作、ヴィニャーリ『カッツァリア』の貴重な校訂版を読解・注釈する作業を続けている。シエナの同時代政治および社会に関する風刺的な意図に焦点を合わせた先行研究もあるが、本研究ではむしろ性器や臀部を一種の擬人像として「取り出し」、多様な物語的文脈に挿入したり、あるいは部分同士で奇妙な対話や時には性行為を行わせる記述が注目される。これらの完全な解釈は、パルミジャニーノを含むマニエリスム世代の美術と明らかな類似性を見せている。、
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