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2022 年度 実施状況報告書

マニエリスムの「時代の目」としてのエロティック文学:脱規範的身体表現の形成と展開

研究課題

研究課題/領域番号 20K00166
研究機関東北大学

研究代表者

足達 薫  東北大学, 文学研究科, 教授 (60312518)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードマニエリスム / エロティック文学 / パルミジャニーノ
研究実績の概要

2022年度において、勤務先の業務過剰および美術史学会事務局長の重職を負担することとなったため、海外研究ができなかった。そのため、以下の2点に重点を絞って調査した。
第一に、パルミジャニーノによるエロティック描写、特に素描における例を以下の観点から分類し、その描写上の特性をデータベース的に網羅する作業を続けた。①性行為およびそれに関わる神話的主題(例 マルスとウェヌス) ②ファルス(男性器)を拡大したり、強調したりする素描(例 いわゆる「ガニュメデス)) ③性器を拡大したり、他の場面の中に挿入して強調する素描(例「サバトに向かう魔女」)
続いて、パルミジャニーノが描いた注文作品および公的作品におけるエロティックな描写および性的部位の強調を再検証した。その検証において、以下の重要な(しかし見過ごされがちな)先行研究を見いだした。James Grantham Turner, An Erocic "Annunciation" by Parmigianino or Bedoli, Source: Notes in the History of Art, Vol. 29, No. 2 (Winter 2010), pp. 21-26. この研究による指摘を検証することが新たな課題となった。
他方、同時代におけるエロティック文学の重要例でありかつアクセス困難な著作、ヴィニャーリ『カッツァリア』の貴重な校訂版を読解・注釈する作業を続けている。シエナの同時代政治および社会に関する風刺的な意図に焦点を合わせた先行研究もあるが、本研究ではむしろ性器や臀部を一種の擬人像として「取り出し」、多様な物語的文脈に挿入したり、あるいは部分同士で奇妙な対話や時には性行為を行わせる記述が注目される。これらの完全な解釈は、パルミジャニーノを含むマニエリスム世代の美術と明らかな類似性を見せている。、

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

2022年度より学内業務が急増するとともに美術史学会事務局長の任務が課せられた。いずれも本研究当初の予定にはなかったものであり、本研究の遂行が大いに妨げられる結果となってしまった。加えて、コロナウィルスの余波によって当初予定していたい海外調査がいまだ行われていない。これはきわめて問題的な状況であるため、2023年度はパルミジャニーノと『カッツァリア』に的を絞り。それらの分析を継続してとにかく進めるこことした。

今後の研究の推進方策

他方、イタリア美術研究者のグループによる著作の刊行を予定しており、その中に「パルミジャニーノにおけるエロスとユーモア」と題する本研究の途上報告を行う予定としている。この論文では、おおよそ。以下の論点が述べられる予定である。
近年、パルミジャニーノ(1503-1540)による男女双方の描写におけるエロティシズムとユーモアが問題視されている。女性の場合は乳房および乳首、男性の場合は男性器および臀部が、世俗的ないし古代神話的テーマにおいてばかりでなく、宗教的主題の祭壇画でさえ異様に強調される。それらの作例では、女性描写の場合はエロス、男性描写の場合はユーモアが濃厚に漂っている。この描写に関して、これまでの解釈を踏まえながら、次のような源泉を提案する。(1)15世紀末から16世紀初期にかけての古代美術からの影響および聖俗主題の融合現象。(2)旧約聖書「雅歌」の影響と需要。(3)ペトラルカ主義文学における身体定型からの影響。(4)性的部位を“主人公”とするエロティック対話、ヴィニャーリ『カッツァリア』(1536年頃)との顕著な類似性。以上の観点を検討しながら、マニエリスムにおける「時代の身体」(バクサンドールの「時代の目」に基づいてターナーが提起した概念)を明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

2022年度に予定していた海外調査が実現できなかったため、主にイタリア美術史関連図書の購入に物品費を充当し、旅費は発生しなかった。この金額については2023年度、可能な限りの資料収集および機会を捉えた調査のために使用する予定としたい。調査期間は2024年2~3月、調査地はイタリア(ローマ、パルマ、ボローニャ)およびミュンヘン、ドレスデンを予定している。

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公開日: 2023-12-25  

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