研究課題/領域番号 |
20K00169
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
天野 知香 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (20282890)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 女性芸術家 / 室内 / ロマーヌ・ブルックス / エドゥアール・ヴュイヤール / 女性パトロン / 20世紀フランス |
研究実績の概要 |
2020年度は本来研究計画に基づき特に両大戦間を中心にした女性芸術家およびメセナ活動を行なった女性たち、加えてこの時期における女性肖像画に関する基礎的な調査をフランス、パリの国立図書館、国立美術史研究所図書館、パリ国立近代美術館資料室等で行うことを計画していたが、コロナ感染症の流行のために渡航が一切叶わなくなり、大幅に研究の進展が阻まれることになった。 こうした状況に応じて、2020年度は日本で可能な資料収集に注力することとし、リモージュ美術館他で2020年11月以降開催されたValadon et ses contemporaines,Peintres et sculptrices 1880-1940展カタログやArchives American ArtのRomaine Brooks資料等をはじめとして、日本で購入、あるいはネットを通じて収集できる新旧資料やアーカイヴ資料を入手して精査することに従事した。調査は限定されたとはいえ、今日世界的に女性芸術家研究の関心は高まっており、展覧会や資料公開の動きは広がっているため、予想以上に充実した資料収集が可能となった。 またこうした調査に基づいて、特にロメーヌ・ブルックスのアトリエの実態と表象について明らかになった事実やヴュイヤールによる両大戦間の女性肖像を中心に、室内をテーマとした講演(町田市立国際版画美術館 「アーティストたちの室内画ー見慣れない日常ー」展記念講演会「『密』な世界ーモダン・アートにおける室内」3月20日(土))の機会に、両大戦界における女性芸術家とアトリエや室内のあり方の関係をめぐる歴史的変化についての新たな知見をまとめることができ、現在これを元に論文執筆を構想中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は予想外の世界的な感染症の蔓延のため当初予定していたフランス、パリを中心とした作品調査や資料収集が全く行えないという状況に陥った。特に重要な調査目的となるフランスやアメリカは日本以上に感染が広がり、未だ渡航の見通しは立たないままである。 また大学教員として、国内でもオンライン授業を中心とした状況に対処するために従来よりも一層の時間と労力を教育準備のために注ぐことが必要となった。 そのため、日本においてネットや購入によって可能な限り資料収集とその精査を試み、一定の進展や見たたものの、本研究は作品調査および資料収集の面で海外渡航を不可欠とする部分を含んでおり、やはり研究の順調な進展というには至らない状況であったと言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の春現在においても未だ世界的な感染症の収束は見極めることができず、日本でも今後のより一層の蔓延が予測されている。フランスの状況もワクチンによって若干改善しつつあるとはいえ見通せず、本年度の海外渡航の予定も立てることができない状況である。また大学のオンライン授業も継続しており、多大な労力を必要とする状況が続いている。 したがって2021年度においても予定通りの研究を推進することが可能かどうかは状況次第であると言わざるを得ず、少なくとも現時点では、予定通りの海外渡航等の予定遂行は極めて難しい。しかしその中で、ネットや購入を通じてできる限り資料を収集し、またその精査を深めることで、できる限りの研究の進展を試みるつもりであり、もちろん海外渡航が安心して行える状況になれば、予定の海外調査と資料収集を進め、研究を進展させるつもりである。 また一方で国内で入手できる資料からも一部新たな知見を得ることができている側面もあり、国内研究を進める中で部分的でも研究成果を形にすることを構想してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナの世界的な蔓延のため、大学としても海外旅行を控える方針が出され、計画していた海外調査が全く実現できなかった。このため旅費として計上していた経費を使用することができずその分が全て次年度使用額となった。2021年度に海外調査が可能となった場合、旅費として使用することが見込まれる。万一2021年度においても海外渡航が思うようにできなかった場合は、調査用のアイパッドや記憶媒体、および資料や図書のための前倒し使用も検討する。
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