研究課題/領域番号 |
20K00172
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研究機関 | 金沢美術工芸大学 |
研究代表者 |
保井 亜弓 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 教授 (30275086)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スザンナ / バトシェバ |
研究実績の概要 |
今年度もコロナ感染対策のため勤務機関が海外出張禁止であったので、海外調査は行うことができなかった。 そのかわりに、文献調査を中心に研究を進めた。その成果の一部は、勤務機関の紀要に論文執筆した。論文の内容はキリスト教主題の入浴図の分析として、「スザンナと長老たち」と「バトシェバの入浴」をとりあげた。その調査研究から明らかになったことは、中世の図像と近世以降のよく知られている図像がかなり異なるということである。それは、中世における解釈の相違に基づくものであるが、とくにバトシェバはダビデを誘惑する悪女というネガティブな意味が後世では強いが、中世ではキリストとエクレシアにも譬えられていた。 また、ルネサンス期における女性の地位を姦淫と貞節というこの両主題における重要な要素である点から考察した。女性の地位はルターの改革によって、カトリック側も変革を迫られた。ルターは、自身も脱走修道女と結婚するという聖職者のタブーを犯したが、結婚というひとつの共同体を重視し、それは、カトリックにおける未婚の聖職者を上位とする考えとは正反対であったと言える。しかしながら、ルター派においても、カトリックの司祭に代わるのは主人としての男性であり、女性の地位が男性に従属するものであったことには変わりなかった。両者に違いはあるものの、貞節を最上の美徳とし、姦淫を大罪とすることは、家父長制の下でより強固に女性の性をコントロールしていたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた海外調査に行けなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
海外出張ができるようになったため、予定していた海外調査を行うことを目的とする。それと同時に文献調査も進め、論文執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査を行いたいため。ウクライナ情勢のために海外渡航費が割高になっており、またコロナの感染にも配慮しなければならないために、当初よりも多い予算が必要であると予想される。
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