本研究では、水の持つ象徴的意義を考慮しつつ、日常的な行為から通過儀礼としての儀式的な入浴までを注目し、特に美術に表された入浴図を図像的に分析した。 まず、ヨーロッパの風呂の歴史を概観し、その上でキリスト教におけるキリストの血、聖血に注目して、聖血を浴びる表象の分析を行った。さらに美術の主題としてよく知られる、ギ古代神話の「ディアナ」の物語と、キリスト教の「スザンナの水浴」「バトシェバとダヴィデ」の物語を分析した。 成果としては、とくに物語主題は、近世のヨーロッパではほぼ表現が定型化するものの、いくつかのパターンに分類できること、また中世における表現の変遷が重要であることが判明した。
|