研究課題/領域番号 |
20K00173
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
菅原 真弓 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (10449556)
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研究分担者 |
神内 有理 京都芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (60751906)
高浜 快斗 山形県立米沢女子短期大学, その他部局等, 講師 (20869523)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 浮世絵 / テキストマイニング / 浮世絵研究 / 受容史 |
研究実績の概要 |
研究分担者との研究会や打ち合わせに関しては、2年目となる2021年度も対面でのそれは叶わなかった。しかし、2020年度の反省を踏まえ、またコロナ禍を背景にその使用方法や機能について理解が深まったオンライン会議システムを用いての打ち合わせを複数回持つことができたことは収穫であった。 本研究の柱の一つである「先行研究の可視化」(浮世絵研究の様相をテキストマイニングで解析し、これを改めて分析する)の面では、大きな進捗があった。研究分担者・高浜との頻繁なオンライン打ち合わせを基に、まずは現在も刊行を続けている浮世絵研究専門雑誌『浮世絵芸術』(国際浮世絵学会研究誌)の創刊号(1962)から現在までの計181冊を対象に、テキストマイニングによる解析を行い(高浜)、解析結果をうけてその意味を分析した(菅原)共著論文「『浮世絵芸術』に見る浮世絵研究の動向分析ーテキストマイニングの手法を用いて」(『文化資源学ジャーナル』1号、大阪市立大学文化資源学会、2022年3月)を発表することができた。成果としては第一歩であるが、しかし山積する課題も発見されることになった。それは主に分析抽項目の不足である。そこで人文学(この場合は美術史学、浮世絵研究)と情報科学との共同研究としてさらに研究を進めるべく、代表者の所属大学による競争的資金への申請や外部財団の競争的資金への申請(代表は分担者高浜)を行った。 一方、浮世絵受容に関する作品、作家に関する研究は、口頭発表という形で公表することができた。「近代絵画に見られる浮世絵DNA」というテーマで「浮世絵的」な構図や画面構成とをさまざまな作品から抽出し、高橋由一、橋口五葉、岸田劉生、吉川観方、そして北野恒富について考察を行った。また個々の作家の浮世絵研究とその表出、という観点もここに加えている。これらについては2022年度に論文化する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍下で行う研究の進め方に関する「知恵」を、多少なりとも得ることができたこと、昨年度の反省を踏まえて「文献のみでできること」を優先させたことが、2021年度の進展をもたらしたものと考えている。刊行されている雑誌資料、既発表の文献資料、といった資料研究に注力したことが功を奏したと思われる。 一方で、2021年度もまた実作品調査や対面での研究会が実施できなかったことは残念である。
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今後の研究の推進方策 |
・浮世絵研究の経緯に関する研究:既に収集済みの文献資料に関しての分析を実施する。人文学的分析と併せ、分担者高浜との共同研究によって、テキストマイニングによる解析を実施して成果をあげる。また未収集文献資料に関しては、購入もしくは公共図書館蔵書資料を用いて、分析を行う。人文学的分析と情報科学(テキストマイニング)的解析との共同研究部分は、2022年度中に論文化し、これを投稿する(『浮世絵芸術』を想定)。 ・作家による浮世絵研究とそれによる作品への影響に関する研究:2021年度に行った作家による浮世絵研究を詳細にまとめ、その研究と作品との関係について考察を加える。作家による浮世絵研究のあり方はさまざまであり、浮世絵収集や浮世絵の複製制作なども含まれる。それらの関係性についても考察を加え、これを論文として投稿する(学内紀要もしくは関係学会の学会誌などを想定)。 ・近代に与えた浮世絵の影響=「浮世絵DNA」についての考察:構図や画面構成などの詳細な検討によって、明文化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計上した調査旅費および研究会にかかる費用(共に旅費、宿泊費)を、やはりコロナ禍が原因となり使用することが出来なかったことが理由である。早い段階でこれに対応する策を講じる必要があったと反省している。 今年度は調査対象資料の購入および調査、研究会費用に充てることとする。
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