研究課題/領域番号 |
20K00180
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
井上 仁美 (井上瞳) 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (50779337)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ボストン美術館 / 在外日本美術コレクション / ビゲロー / フェノロサ / 岡倉天心 / 法明院 |
研究実績の概要 |
本研究では、ボストン美術館における日本美術コレクションの形成とその位置付けについて、ボストンの富豪ウィリアム・スタージス・ビゲロー(William Sturgis Bigelow, 1850-1926)の日米における文化支援の事績を取り上げ、特に仏教思想との関連から考察を加えるものである。 本研究の交付申請時に記載したビゲローに関する「研究の目的」は次の3点である。①日本文化支援者としてのビゲローの活動、②ボストン美術館における理事と日本美術コレクターとしてのビゲローの役割、③仏教者としてのビゲローの思想とその影響、以上各項目について明らかにすることを目的とする。2021年度は前年度に引き続き、②のボストン美術館における活動に焦点を当て研究を進め、特に③とも関連してボストン美術館の仏像展示室(Buddhist Room)について掘り下げて調査を行った。これと平行して引き続き③の仏教者としての足跡を記す資料調査に当たった。 ①について、1909年に新設された仏像展示室は、ビゲローだけでなく岡倉覚三(天心)やフランシス・ガードナー・カーティスら日本部の学芸関係者が様々な形で関わって完成した事業である。これを③の仏教との関連で俯瞰的な視点を加えて考察を加えることとした。欧米における仏教の流布と日本美術との関係から、欧米美術館における仏教美術の位置付けについて考察を加え、ボストン美術館でのビゲローの重要性を明らかにした。 ②について、現在三井寺(園城寺)法明院に残る近代文書について引き続き調査を行った。法明院にはビゲローが受戒した桜井敬徳の遺品や、敬徳死後ビゲローの仏教の師となった直林寛良との往復書簡が多数残されており、資料の整理および解読を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度もコロナ禍のため海外渡航ができず、当初予定していたボストン美術館付属図書館およびボストン公立図書館などでの資料調査を進めることができなかった。特にボストン美術館の仏像展示室について現地調査が必要であったが、現段階では前年度までの調査において収集した資料や、日本国内やオンライン上で手に入る資料を用いて研究を進めた。本件に関しては、ジャポニスム学会国際シンポジウムの企画及び発表によって具体的な成果とすることができた。 また国内では、法明院及び大津市歴史博物館寄託資料の調査により、法明院文書の整理・調査を進め、解読を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、法明院文書について引き続き調査に当たるとともに、調査報告書の作成に向けて編集作業に取りかかる。本件についてはまとまった整理がされておらず、これまでも研究者によって論文などで断片的に紹介されてきたものの、全体像を把握することはできない。また、本研究者の調査過程で新出資料も出てきたため、これらも含めて法明院近代文書として整理し、報告書として刊行したい。 渡航が可能であれば、前回の調査時に未見であったボストン美術館付属図書館所蔵のアーカイヴ調査を進め、ボストン美術館における日本美術の展示に関して、ビゲローの果たした役割や業績について明らかにしたい。とくに、1909年の新美術館開館に際し、仏像展示室設置の契機となる記録や書簡などを重点的に調査し、新美術館の日本美術展示について、ビゲローがどのように関わったのかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため渡航できず、旅費の使用がなかったため。 2022年度は調査報告書の作成のため、印刷費や謝金の使用が主な支出となる予定である。
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