研究課題/領域番号 |
20K00181
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小林 剛 関西大学, 文学部, 教授 (70388411)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ美術史 / アメリカ文化研究 / 表象文化論 |
研究実績の概要 |
本研究は、2014年に出版した拙著『アメリカン・リアリズムの系譜』(表象文化論学会奨励賞受賞)の第3章で論じた「もう一つのモダニズム」に関する資料をさらに収集、調査、分析することによってアメリカ美術史を書き換え、とくに日本美術とアメリカ美術の関係について新たな道筋を明確に描くことを目的としている。その章では、20世紀前半のアメリカ美術に見られる三つの異なる「伝統」について論じているが、そのうちの二つは、もちろんヨーロッパ由来のモダニズムと拙著で主に論じたアメリカ特有のリアリズムの系譜である。そして、そこでもう一つの伝統として挙げているのが、日本美術を基にして独特な芸術理論を創り上げたアーネスト・F・フェノロサから弟子のアーサー・ウェズリー・ダウに受け継がれ、ダウの美術教育書を通じてアメリカ美術教育の根底に地下水脈のように流れることになった「フォーマリズム」の系譜である。 残念ながら、こうした「もう一つのモダニズム」に関する研究は日米両国においてきわめて不十分な状態のままであったため、本研究は、これまで見逃されてきたと思われるこの系譜に関する資料を主要なアメリカ合衆国のアーカイブやニューヨーク、ボストン、フィラデルフィアといった東海岸の主要都市にある美術館、美術学校の資料室において調査することによって、この道筋をさらに明らかにすることを目的としていた。 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う本務校における海外出張の制限措置のため、そうした一次資料等の調査のために渡米することが一度も叶わなかった。したがって、海外調査費用がほとんどであった本研究予算もまったく執行できていない状況が継続している。再び渡米が可能になった暁には速やかに研究を再開したいと考えているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の主目的は、作家の一次資料等をアメリカ合衆国のアーカイブや美術館、美術学校資料室(具体的には、ワシントンにあるアーカイブス・オブ・アメリカン・アート、ニューヨークにあるニューヨーク近代美術館やホイットニー美術館やダウが教授をしていた各美術学校の資料室、ならびにフェノロサの資料があるハーバード大学やボストン美術館など)まで直接来訪して調査することであったため、本研究予算のほとんどが海外調査費用となっていた。 しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う本務校における海外出張の制限措置のため、渡米することが一度も叶わなかった。また、母校である東京大学のアメリカ太平洋地域研究センター図書室の資料も容易に利用できるはずであったが、ほとんどの期間国内出張も自粛要請が出ていたため、それも叶わなかった。したがって、唯一アクセスできたのは、勤務先である関西大学の総合図書館とそこで契約しているオンライン・データベース等のみであり、残念ながら研究はほとんど進んでいないと言わなければいけない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大が日米両国において十分抑制され、渡米に関して何の懸念事項もなくなった段階でアメリカ国内での一次資料等の調査を速やかに再開したいと考えている。それまではオンライン・データベース等を用いて二次資料等の調査を十分行う所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外調査が新型コロナウイルスの感染拡大により一度も行うことができなかったため、次年度使用額が生じている。再び渡米が可能になった暁には速やかに海外調査に赴きたいと考えている。
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