研究課題/領域番号 |
20K00181
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小林 剛 関西大学, 文学部, 教授 (70388411)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アメリカ美術史 / アメリカ文化研究 / アメリカ研究 / 表象文化論 / 視覚文化論 / 比較文化論 / 日米比較文化 |
研究実績の概要 |
本研究は、2014年に出版した拙著『アメリカン・リアリズムの系譜』の第3章で論じた「もう一つのモダニズム」に関する資料をさらに収集、調査、分析することによってアメリカ美術史を書き換え、とくに日本美術とアメリカ美術の関係について新たな道筋を明確に描くことを目的としている。とくに、その系譜を辿るうえで不可欠な人物はアーネスト・F・フェノロサとその弟子であったアーサー・ウェズリー・ダウであるが、昨年度はまだ十分研究されているとは言えないダウについて調査を行った。アメリカ美術史上これまでにもっとも多くの読者を持った包括的美術教育書と言われている『コンポジション』を書き、ニューヨークのプラット・インスティテュート(1895年から1903年まで)やアート・スチューデント・リーグ(1899年から1903年まで)やコロンビア大学のティーチャーズ・カレッジ(1904年から彼が亡くなる1922年まで)で長く教鞭を執っていたダウの美術理論は非常に革新的なものであったが、今回プラット・インスティテュート・アーカイブで行った調査により、彼の方法論がどのように美術教育の世界に導入され、当時の学生たちはそれをどのように受け入れていたのかがある程度明らかとなった。また、そうした新しい美術教育法が全米へと拡がっていくきっかけをつくった人物についても調べることができた。今後も引き続きダウが教えていた美術学校において資料を収集し、その道筋を明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、2020年度から毎年定期的にアメリカへ赴き、ダウやその弟子たちの軌跡を辿る予定であったが、コロナ禍による渡航制限のため2022年度の途中までリサーチに出かけることが叶わなくなり、当研究も著しく遅れることとなってしまった。2022年度の終わりにようやくニューヨークのプラット・インスティテュート・アーカイブにてダウに関する一次資料の調査を行ったが、当然のことながらまだ調査は不十分な状態である。
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今後の研究の推進方策 |
渡航制限が完全に解除され、自由に研究活動が行えるようになったため、今後はコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジやUCLAやハーバード大学など、ダウやフェノロサの資料が残されている場所へと赴き、引き続き研究を進めていく所存である。また、ダウに関する調査が完了したあとは、その弟子たちや彼の理論から大きな影響を受けたと考えられる建築家のフランク・ロイド・ライトなどについても研究を広げる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による渡航制限のため、2022年度途中までアメリカ合衆国でのリサーチがまったくできず、未使用分について一年間の延長申請をしたことによる。2023年度夏、冬、春の長期休暇中にロサンゼルスのUCLA、ボストンのハーバード大学、ニューヨークのコロンビア大学、ワシントンDCのアーカイブズ・オブ・アメリカン・アート等にあるアーサー・ウェズリー・ダウやアーネスト・F・フェノロサ関連の資料を調べるためにアメリカ合衆国へ渡航する予定であり、その際の海外出張費として未使用分を充てるつもりである。
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