研究課題/領域番号 |
20K00182
|
研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
金 貴粉 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (20648711)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 朝鮮書芸 / 近代書道 / 植民地朝鮮 / 美術 |
研究実績の概要 |
本年度(2023年度)は、国内外の諸機関において、近代朝鮮の書画作品調査を行うことができた。 特に、韓国の国立中央博物館では本研究テーマに深く関連する呉世昌に関する特集展覧会において直接作品を実見し、調査を進めることができた。さらに、九州国立博物館、福岡市美術館においても、朝鮮半島における書画展覧会が開催され、近代書画関連資料の調査を行った。 韓国では呉世昌研究者と研究交流を通して、本研究に対する指摘と助言をいただくことができた。また、朝鮮近代の書芸家と同時代に活躍した中国の書人たちについて、専門家から類似点等についての重要な指摘を受けることができた。 本年度では、朝鮮人書芸家による書研究が同時期の日本人研究者にどのような影響を与えたのかという点について考察するにあたり、日本人書家の工藤文哉を中心にその実態を明らかにした。その成果を第65回全国大学書道学会(於跡見学園女子大学)で「工藤文哉による「朝鮮書道史」研究とその意義」と題し、研究発表を行った。工藤文哉は1930年から配本が開始された『書道全集』24巻に「朝鮮書道史」を著している。工藤は当時、朝鮮総督府官僚兼書家として活動していた。工藤は、官僚としての職務の合間をぬい、1919年に『心無けい礙楼鶏林書存』という朝鮮書跡集の刊行も行い、日本人による朝鮮書道研究の嚆矢となった。本調査の結果、そこには呉世昌による助言や協力があったことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初予定していた資料・作品調査を予定通り進めることができた。また、学会発表において研究成果報告を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は最終年度のまとめとして、これまで調査を行った内容を精査し、分析・検討を加えていく予定である。朝鮮書芸家らが日本人書家に対して与えた影響について明らかにすることができたので、2024年度は、明らかになった事象を総合的に検討し、結論をまとめ、社会還元していくことを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査のための旅費として使用する予定であったが、当初予定していた国内外調査を複数回行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。また、翻訳等を自分で行ったため、経費がおさえられた。 2024年度は調査のための旅費、最終年度の成果物作成費用として使用したい。
|