研究課題/領域番号 |
20K00184
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研究機関 | 公益財団法人大和文華館 |
研究代表者 |
宮崎 もも 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部係長 (10416266)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 住吉派 / やまと絵 / 江戸時代後期 / 美術史 |
研究実績の概要 |
本研究は、江戸幕府の御用絵師として活躍した住吉広行・広尚・弘貫・広賢の画業の特色を明らかにするものである。従来の住吉派研究では、江戸時代前期に活躍した初代如慶と二代具慶の研究が主であったが、江戸時代後期に活躍した五代広行以降に焦点を当て、如慶以来の伝統の守旧、あるいは変容について考察するとともに、同時代に活躍した他派の絵師たちとの影響関係を分析する。さらに、御用絵師であることから、為政者の文化事業との関係についても重視して研究を行い、江戸時代後期の絵画史研究においてこれまで埋没していた住吉派の重要性について具体的に明らかにすることを目的とする。特に以下の二つの方向性より研究を進める。 一つ目は、江戸時代後期の住吉家当主である五代広行、六代広尚、七代弘貫、八代広賢の作品の調査。作品調査を通じて、どのような作例が現存し(画題)、どのように描かれているのか(画風)を把握し、さらには制作背景についても考察することで、江戸時代後期の住吉派の画業の実態を明らかにする。本年度は、売立目録に掲載される広行・広尚・弘貫・広賢の作品データを集めるとともに、東京、愛知、福井、大阪、京都の所蔵館や所蔵者のもとで具体的な作品や模本の調査を行った。 二つ目は、江戸時代後期の住吉派の絵師との影響関係が窺える他派のやまと絵系作品の調査。当時の復古的・尚古的思潮の隆盛を背景にした、王朝時代や天皇を賛美する復古的な画題、考証を反映させた描写などに注目し、相互の影響関係を具体的に明らかにする。本年度は、酒井抱一、鈴木其一、中野其明など江戸琳派の作品の調査を行い、特に抱一と住吉派との関わりについて講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度には、ヨーロッパの美術館での住吉派関連作品の調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大問題によって、海外出張ができなかった。また、国内での調査も緊急事態宣言などで思うように進められなかった。 しかし、移動ができる期間に東京、愛知、福井、大阪、京都などで調査を行い、作品データと文献データを蓄積することができた。海外での調査は次年度以降に集中的に行うことによって遅れを取り戻すことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、五代広行以降の住吉派作品のデータ収集を進める。 住吉派当主の作品の画題・画風を把握した上で、同時期の狩野派、江戸琳派、復古やまと絵派などの絵師たちの作例にも視野を広げ、住吉派による画題の選択や構図、描法が、同時代の他派の作例とどのような関係にあるのかを検証を進める。 さらに、住吉派の画業と関わる文化事業についてデータを集積し、住吉派の作品データ、事績データと合わせて考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス問題によって、海外調査に行けなかったため。
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