本年度が最終年度であるため、前年度までに引き続き3つの目的に取り組み全体の総括を目指した。 ①若冲画賛の読解は、禅文化および美術史研究者、学生からなる研究会を月に1回(年間12回)、オンラインで実施した。本科研終了後、来年度刊行を予定して3年間の研究会の成果に基づく書籍を準備中であり、その打ち合わせ等も行った。 ③若手研究者の漢詩文賛読解能力の養成は研究会および書籍準備によって一定の成果をあげたものと考えている。 ②若冲に関わった禅僧に関する資料の探索は、近畿圏の市町村史等の資料を探ったが十分にはできていない。ただし、コロナ禍の状況変化により、実作品の調査撮影を国内に限ってだが相当進めることができ、若冲作品の造形的特徴への理解、作品附属情報の収集、禅僧賛の書体や印章の確認等において進展があった。 上記を含め3年間で研究会の実施は31回を数える。毎回、参加者全員が特定の作品を選び発表を担当するかたちで行い、2点程度の賛を取り上げたため、およそ60数点の作品について賛の翻刻、読解を蓄積することができた。これにより単に賛を読み解くのみならず、若冲の画業の輪郭を新たにとらえなおす視座を得ることもできた。また、研究会参加の複数メンバーとともに実施した作品実見調査では、研究会の成果を踏まえ、賛者の書風や印、紙質等、附属品の精査等を行うことができた。研究会、そこでの画賛読解が活動の軸となり、伊藤若冲の画業、人的交流等、その考察について大きな成果を得ることができたと考えている。2023年度刊行予定の書籍にその成果を盛り込みたい。
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