研究課題/領域番号 |
20K00195
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
長崎 巌 共立女子大学, 家政学部, 教授 (20155922)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肉筆雛形本 / 小袖 |
研究実績の概要 |
本研究では、江戸時代後期から明治時代中期に至る女性の小袖・着物の様式変遷を解明するために不可欠な資料と考えられる肉筆雛形本の所在を明らかにし、それらの具体的内容を含めてデータベース化して公開することを到達目標としている。 2021年度は、本来2020年度に予定されており、新型コロナウイルス蔓延の影響で実施できなかったために2021年度に延期して実施する予定であった、(1)肉筆雛形本の所在が確認されている図書館や資料館、および研究機関、あるいは(2)所在があると推測される、国立国会図書館・三井文庫・京都府立資料館・京都市立芸術大学図書館・東北大学図書館狩野文庫、西尾市岩瀬文庫、天理大学図書館などで実物調査を行う計画であった。 しかし今年度も新型コロナウイルス感染の終息が見られず、各機関へ赴いて行う実物調査の実施ができなかったため、研究2年目にあたる2021年度は、主に以下の作業を進めた。 (1)2020年度、2021年度に購入した肉筆筆雛形本及び色見本帳などの表紙や墨書、主要ページなどを、今後論文、図録などでの掲載を想定して、美術写真カメラマンに発注撮影した。 (2)2020年度、2021年度に購入した肉筆筆雛形本及び色見本帳の一部、及び個人蔵の肉筆雛形本、色見本帳の一部につき、アルバイトを雇用して全ページ撮影した。 (3)裾にのみ模様を配する形式の着物が大部分となった明治時代には、呉服の注文に当たっては、肉筆雛形本を使用することに加え、裾の部分の模様を生地に染め出して冊子に貼り付けた染見本も使用された。明治時代にはまた小紋染も、多く着物の加飾に用いられたため、裾模様の着物を注文しない場合には、肉筆雛形本を用いず型染裂を貼り付けた染見本帳が呉服注文に用いられた。2021度も2020年度に引き続き、呉服注文に際して肉筆雛形本と合わせて用いられる染見本帳・小紋見本帳を研究のため購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は、『科学研究費基盤研究C「小袖雛形本・型染見本帳・色見本帳等の所在及び現存状況に関する研究」(2016~18)』の研究の一環として、2017年、アメリカのボストン美術館アジア・アフリカ・オセアニア部所管の小袖雛形本40件の調査を行った。その際、同部には、これら以外に200件を越す染織関連冊子資料が所蔵されており、未整理のため実数は不明ながら、その中に、江戸時代から明治時代にかけての肉筆雛形本が多数含まれていることが分かった。またこの時、同館学芸員のアドバイスにより、ハーバード大学イェンチェン・ライブラリーと、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館でも小袖雛形本の調査を行ったが、その際、これらの機関にも数種の肉筆雛形本が所蔵されていることが分かった。 当初の計画では2021年度の研究事業の中心となるのは、これら海外研究機関・美術館所蔵の肉筆雛形本の現地調査であった。また、2020年度に実施予定であったにも関わらず、新型コロナウイルス蔓延の影響で実施できなかった日本国内所在の肉筆雛形本の実地調査も2021年度に合わせ行う予定であった。しかし2021年度も新型コロナウイルス感染は終息せず、国内外への各機関へ赴いて行う調査は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年以来の新型コロナウイルス感染のため、調査・研究は現在までやや遅れているが、2022年度も新型コロナウイルスの格段の終息は見込めないため、コロナウイルス拡大の影響で2020年度、2021年度に実施できなかった肉筆雛形本の現地調査のうち、アメリカのハーバード大学イェンチェン・ライブラリーと、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館における調査は断念し、国内各研究機関及び美術館所蔵の肉筆雛形本については、、国立国会図書館・東京国立博物館資 料館・東京藝術大学図書館・三井文庫、京都府立資料館・京都市立芸術大学図書館・立命館大学アート・リサーチセンター、東北大学図書館狩 野文庫、西尾市岩瀬文庫、天理大学図書館などの内から、調査可能な所蔵機関に限定して現地調査を行うことを目指すが、難しい場合には古書などの収集に注力する方向で研究を進める方針である。 また収集した資料の撮影や調査も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染が再拡大し、2021年度行う予定であった肉筆雛形本の所在が確認あるいは推測されている、国立国会図書館・東京国立博物館資料館・東京藝術大学図書館・三井文庫、京都府立資料館・京都市立芸術大学図書館・立命館大学アート・リサーチセンター、東北大学図書館狩野文庫、西尾市岩瀬文庫、天理大学図書館などでの肉筆雛形本の実地調査が行えなかった。今年度の予算支出の主たるものは実地調査のための旅費、及び現地での資料撮影費であるため、これらが執行できなかった。 2022年度は、今後の新型コロナ感染の状況次第であるが、まずは2021度果たせなかった実物調査の一部と資料撮影を目指す。但し、感染が収束せず、出張が困難な場合には、有償にて所蔵者から資料写真などを提供してもらうほか、出張撮影などを行う予定である。 また調査出張ができなかった2020年度、2021年度は、古書として販売されている肉筆雛形本や色見本帳、染見本帳などの資料を購入したが、これらの調査によりその有用性が明らかになったので、2022年度も、古書として販売されている肉筆雛形本を購入して研究のための資料を充実させたいと考えている。
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