研究課題/領域番号 |
20K00196
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
草原 真知子 早稲田大学, 文学学術院, 名誉教授 (40271366)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メディア考古学 / 着物 / デザイン / ファッション / マスメディア / プロパガンダ / エンターテイメント / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本年度は研究の第一段階として資料を整え研究の基礎を固める時期と位置づけているが、年間を通じて新型コロナウィルスの蔓延のため外出が困難な状況が続いたため、当初計画していたヒアリングや関連施設の調査は延期し、自宅でできる調査研究を行った。具体的には以下のような内容である。 (1)今までに入手した書籍や資料の比較検討と関連研究の調査(2)今まで収集した実際の布地のデジタル画像化と分類、整理(3)コレクターや博物館などに所蔵されている着物柄の調査(オンライン)(4)明治・大正期のメディアに関する新聞データベース、文学、書籍、研究論文の調査 (4)については、明治期のメディアと演劇、見世物、映画等との関係について調査し、新たな知見を得ることができた。この成果の一部はメディア考古学を特集したジャーナルに現在投稿中の論文に反映させている。当論文のテーマは明治期のパノラマ館の登場をめぐる政治・文化・ビジネスの関係であり、パノラマや油絵風の図柄は本研究の対象としている着物柄にも現れるため、本研究と関連している。ジャーナルの出版はCOVIDのため遅れており、2021年秋以降になる見通しである。 また着物デザインにもしばしば現れる新聞とラジオがどのように政治や娯楽と関わっていたかについても調査を行った。図書館で資料を調べることが困難な状況なので、インターネット上で入手可能な論文と購入済みの海外の研究書を中心とした。研究目的にも挙げたように、時事性や娯楽性、あるいはプロパガンダとの結びつきは日本の着物柄の持つ特徴であり、その要因を考察するためには国際的な視点が必要である。 外部での調査が困難な状況であったが、幸い東京国立博物館で着物の歴史に関する大規模な展示があったので見学して大部のカタログを入手、着物の意匠全般に関する信頼のおける資料を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの蔓延のため、当初予定していた聞き取り調査や実地調査を行うことができなかった。これを本研究の基礎の部分に位置づけていたため、研究全体の予定を変更せざるを得なくなった。関連展示の見学についても、多くの展示が中止または延期され、東京都外への移動が制約されたため、都内で行われた展示2件の見学にとどまった。資料調査のための図書館の利用もほとんどできなかった。また、国内・海外ともに学会がオンライン開催となり、研究者との意見交換の場がなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の状況から見て、当面は書籍や論文などテキスト面での調査研究と、手持ちの着物生地の整理・デジタル化を継続することが安全な方法だと判断している。その上で、個別あるいはグループ化された着物デザインが当時のメディアのどのような状況から生まれ、それが他のメディアとどのような関係にあるか調査し、分析する。これについては既に映画スターの図柄や野球柄について行っており、研究方法の道筋はついている。新型コロナウィルスの状況が収まり、聞き取り調査が可能になった段階で、それまでに得られた知見と仮説を携えて有力なコレクターや研究者、学芸員との意見交換や聞き取り調査を行い、全体像を確認した上で発表の準備を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、国内・国際学会がすべてオンラインあるいは延期になり、また東京以外での調査も行えなかったため、出張旅費が使用されなかった。同様にヒアリングも実施できる状況になかった。また、当初予定していた撮影装置を組み立てるには専門店に赴いて検討する必要があったが、これも躊躇される状況であったため、低額な装置をオンラインで購入した。 今後の使用計画としては、新型コロナが終息して国内外の出張が可能な状況になれば、初年度分として予定していた分も合わせて調査研究及び学会参加ができると考えている。
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