研究課題/領域番号 |
20K00196
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
草原 真知子 早稲田大学, 文学学術院, 名誉教授 (40271366)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日本の近代化と視覚文化 / メディア考古学 / 着物デザイン / 映画史 / 友禅 / パノラマ |
研究実績の概要 |
昨年度は所蔵する資料(着物地)の整理を行い、また、京都において友禅染め関連の展示や資料を調査した。資料の中でも特に写真や映画などの映像に関連した着物地を中心にその文化的背景と友禅染の技術史との関係について研究し、その成果を以下のように発表した。 8月末に刊行されたデジタルハリウッド大學大学院紀要に研究ノートとして[「面白柄」着物デザインのメディア考古学的考察]を投稿。写真と映画を扱った着物地を中心に現在までの研究成果の一部をまとめた。 9月に開催されたInternational Panorama Councilの年次大会にオンライン参加し、明治期の近代化とパノラマ的視覚について"The Panorama as a Cultural Icon in Late 19th Century Japan"のタイトルで論文を発表。1900年パリ万国博のパノラマ館のガイドブックや西欧の風景を描いたパノラマ画が着物地にデザインされたり都市の俯瞰図が着物柄として使われることの意味について論じ、好評を得た。 一般社団法人京都映画芸術文化研究所(おもちゃ映画ミュージアム)が2023年3月に刊行したTOYFILM MUSEUM 8号に「着物柄に見る幻燈・映画・映写機」を執筆(1-24ページ)。幻燈、映画、映写機をデザインに取り入れた着物柄の文化的・技術的背景を分析し、1930年前後、すなわち映画が無声映画からトーキーに変わりつつある時代の京都が映画製作と染織業の両面で当時の日本の中心であったことと着物柄との関係を論じた。 同ミュージアムが2023年3月開催した講演会「マジック・ランタン ー さまざまな幻灯の楽しみ」において、上記のテーマについて講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年間にわたって新型コロナの影響で関連施設の見学や関係者からの聞き取り調査が行えなかったことが影響している。国際会議も当初は物理的な参加を考えていたが、やはり海外渡航がまだ安心とは言えない状況であったためオンライン参加にしたので、期待していたような意見交換ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から研究と並行して発表のフェーズに入っており、今年度もそれを続行する。6月に都内で開催される日本映像学会、9月にヴェネチアで開催される国際会議Media Art Historyでそれぞれ発表を行う。東京都写真美術館で夏期に開催される展示のカタログに論考を執筆中で、また来年刊行予定のRoutledge のメディア考古学特集(単行本)にこのテーマ(メディアとしての着物柄)で論文を依頼されており、本年後半はその執筆に相当な時間を割くことが予想される。 研究については、昨年度のテーマであった映画・俳優・映画主題歌・原作小説・アニメーションキャラクターについての資料調査と分析をさらに深めると同時に、ラジオ、音楽、スポーツなどについて資料を整理し、議論を組み立てる。全体的なテーマとしては、今までに研究してきたパノラマや覗き眼鏡などと着物柄の関係を近代化とトランスメディアという2つの要素で関係づける理論的な研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
最大の原因は新型コロナ勃発により3年間にわたって国際学会への参加や国内での調査ができない状況が続いたため、専ら自宅で資料や既存論文等を対象として研究することになり、旅費や調査のための費用が未使用になったことである。これは今後の調査及び発表のための旅費などに使う予定である。
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