研究課題/領域番号 |
20K00198
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研究機関 | 国際ファッション専門職大学 |
研究代表者 |
須網 美由紀 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 講師 (60567006)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 東西教会合一 / ヴェネツィア / ルネサンス美術 / キリスト教美術 / ビザンティン |
研究実績の概要 |
本研究は、フィレンツェ、ローマ、イタリアの地方都市やフランス等の美術作品に影響関係が指摘されているものの、これまで等閑に付されてきたヴェネツィアにおける、ギリシア正教会とローマ・カトリック教会の合一(以下「東西教会合一」)という理念が与えた影響の諸相に関して、15-16世紀を中心に、美術作品自体と美術作品をとりまく政治的・社会的・宗教的コンテクストの両面から歴史的に検証することを目的としている。 一方の面である、ヴェネツィアにおける「東西教会合一」を象徴すると想定される実作例の調査・収集活動については、世界的な新型コロナウィルスの蔓延のため、現地調査を断念せざるを得なかった。このため、「東西教会合一」を象徴すると既に指摘されている、他地域の作例および14世紀以前のヴェネツィアの先行例について、文献資料を精読し、「東西教会合一」を実際に象徴しているかどうかを検証した。その結果、これらの先行作品には確かに「東西教会合一」という理念が反映されていることを確認した。 もう一方の面である、当時のヴェネツィア美術をとりまく政治的・社会的・宗教的コンテクストについては、一次文献資料や研究書を日本で見出すことがほとんどできない状況であるが、わずかに入手できた刊行本の精読を行った。 また、交付申請書の「研究実施計画」に記載したように、最終年度には、博士論文と補助事業期間の3年間におよぶ研究成果をまとめ、「ヴェネツィア、サン・ジョヴァンニ・クリゾストモ聖堂の装飾プログラム」に関する研究の集大成として、著書の刊行を目指しているため、本聖堂の装飾プログラムを構成する主要作品のひとつである、ジョヴァンニ・ベッリーニによってディレッティ礼拝室のために制作された祭壇画について考察を深め、その成果を3月に開催された研究会で口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的な新型コロナウィルス蔓延により、令和2年度に計画していた、主にヴェネツィアを主とするイタリアでの現地調査や資料収集、および東京での予備調査を実施することができなかった。 現地の美術館や教会堂などにて、写真撮影も含めた画像データを収集し、新たなデータベースを構築することが、本研究課題を遂行するうえで前提となっているため、進捗状況は遅れていると判断せざるを得ない。また、本研究に関連する一次文献資料や研究書は、ほとんど日本に見出すことができないため、美術作品をとりまくコンテクストに関する考察を深めることも困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス蔓延が終息した暁には、今年度に実施できなかった、ヴェネツィアを主とするイタリアにおいて現地調査を行いたい。 交付申請書の「研究実施計画」に記載した計画と変更はない。 ①ヴェネツィアにおける「東西教会合一」を象徴すると想定される実作例の調査・収集作業を行う。具体的には、現地の美術館や教会堂などにて、写真撮影も含めた画像データを収集し、新たなデータベースを構築する。整理されたデータベースをもとに、個々の美術作品が「東西教会合一」という理念を実際に象徴しているかどうかを検証する。 ②当時のヴェネツィア美術をとりまくコンテクスト、つまり政治的・社会的・宗教的背景から、受容者であるヴェネツィア共和国政府や聖俗のヴェネツィア国民の「東西教会合一」に対する関心の度合いを把握する。具体的には、ヴェネツィア編纂史(クロニクル)、ヴェネツィア共和国元首などの演説、日記、宗教行事記録、およびキリスト教の著作や説教集などについて、古文書館、神学校付属図書館や美術史専門図書館で、一定期間の調査・資料収集を行い、「東西教会合一」との相関概念について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に、海外(主にイタリア)での現地調査・収集活動については1回、東京での予備調査については2回を計画していたが、世界的なコロナウィルス蔓延により、計画を断念せざるを得なかった。しかし、ヴェネツィアを主とするイタリアの美術館や教会堂などにて、写真撮影を含めた画像データを収集し、新たなデータベースを構築することが本研究課題を遂行するうえで前提となっている。また、本研究に関連する一次文献資料や研究書は、ほとんど日本に見出すことができなく、現地の古文書館、神学校付属図書館および美術史専門図書館などで、一定期間の調査・資料収集をすることが必須である。このため、当初、令和3年度に計画していた、海外での現地調査1回に加えて、さらにもう1回の現地調査、合計2回行うこととし、本年度未使用額を翌年度分として請求した。
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備考 |
研究発表 須網美由紀「不可視の神との対話のメディウムとしての祭壇画-ジョヴァンニ・ベッリーニ作《ディレッティ祭壇画》を事例として」(「キリスト教美術におけるイメージの意味と物質性:新たな図像学の構想に向けて」研究会、令和3年3月14日)
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