研究課題/領域番号 |
20K00199
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
蜷川 順子 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (00268468)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハート形 / キリストの聖心 / 聖母の聖心 |
研究実績の概要 |
2020年度はパンデミック対策のために予定していた海外調査が行えず、国内で収集可能な文献の分析を中心に行った。そのため、2018年10月に実施したシンポジウムの、日英二か国語版報告書『ハート形のイメージ世界:見えるものと見えないもの』(晃洋書房、2021年)に追加掲載する予定だった論考は、内容の充実が見込めないため別途発表することとし、報告書はシンポジウム登壇者の報告に限ることにした。7章から成る報告書の内容は、第1章「キリストの聖心に対する信心:神学的図像学的研究」、第2章「ハート形:ポルトガル海上帝国におけるハートの象徴、図像、芸術。日の出に向かうハート」、第3章「聖心への信心:アイリッシュ・スタイル」、第4章「受肉したハート:ハートに関する中世思想の特質」、第5章「皇帝の身体と聖心イメージ:仏教と中国の身体観の変容」、第6章「二つの心臓」、第7章「近代美学における「ハートの言語」:バウムガルテンとカント」(著者個人名省略)である。このうち、第1章から第4章までの英文和訳、第5章から第7章までの和文英訳と全体の編集作業を行った。第1、2、4章は、とくに本研究課題の内容と密接に関連するため、この翻訳作業を通して参考文献を充実させることができた。 追加掲載予定だった論考に関連する計画はすべて順延となり、2021年度開催の国際学会も2022年に延期となったが、この大会では、別の課題での発表を予定することができた。 聖母の聖心に関連する論考として、共同執筆のために2019年に準備した論考「聖心イメージとハプスブルクの聖人たち-金羊毛騎士団を手がかりに-」も、2020年度の編集作業を経て、今年度刊行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年に実施したシンポジウムの報告書は2019年度内に完成する予定だったが、当初予定していた和文英訳のための翻訳者が病気のために途中で辞退し、それまでの作業結果を撤回したため、作業が2020年に延期された。年度をまたいだことで、この作業に予定していた研究費の一部が使えなくなり、英文和訳補助を予定していたアルバイトに依頼することができす、すべての翻訳作業を単独で実施したことから、作業の大幅な遅延を招いた。和文英訳に関しては、別途英文監修者を依頼する必要が生じ、このことも作業の遅延に拍車をかけた。 上記のことに加えて、2020年には海外調査に基づいて論考を充実させる予定だったが、パンデミック対策のため海外調査が実施できず、国内での作業を中心にせざるを得なかった。以上のことから、2020年度に実施予定だったことの多くは順延または変更を余儀なくされたが、その理由は以下のとおりである。1)報告書に掲載予定の追加論文が別途単独発表になったのは、報告書の刊行予定が大幅に変更になったためである。2)「聖母の白い聖心」に関連する論文発表を延期したのは、報告書刊行が遅れたので時間が切迫したためである。3)発表を行う予定の国際学会などを行わなかったのは、学会そのものがパンデミックのために延期され、海外調査に基づく予定のセッション申請は、海外調査ができなかったため行わなかったためである。4)2021年6月の時点で、まだ海外渡航のめどはたっていないため、調査の実施を計画することができない。
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今後の研究の推進方策 |
2021度の海外調査を実施できるかどうかは不明である。そのため、2020年度および2021年度の研究実施計画のうち、海外調査を基礎とした計画を変更し、国内の文献調査で実施可能な以下のことをすすめる。 1)ネーデルラントのシトー会とザクセンのヘルフタ修道院との関係に関する論考を、現在蒐集している文献に基づいて作成して、論文発表を行う。 2)「聖母の白い聖心」について、すでにある口頭発表用の原稿に「コンスタンツ宗教会議関係」「ネーデルラントのシトー会とベギン会関係」の内容を加筆して、学会誌への投稿を行う。この論考を英訳して海外の学術雑誌に投稿する。 2022年度の国際学会での口頭発表は決まっているので、少なくともそれに合わせた時期に海外調査を実施する。進捗状況をみて、場合によっては研究期間の延長を申請する。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミック対策のために、予定していた海外出張が実施できず、そのため予定していた論考の作成が遅れた。2021年度は再度海外出張を予定している。内容を調整した論考を国内外で発表する予定である。したがって、次年度使用に回した金額、及び、2021年度配分分は、可能であれば海外出張、および書籍費や英文校正費などに充てる。
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