今最終年度にようやくコロナも落ち着いてきたため、現地への調査を実施することができました。調査によって、画家ゲアハルディンガー、ミュンヘンアカデミーそしてアウトバーンおよび風景画に関係する文献および新聞資料を現地ミュンヘンのバイエルン州立図書館、同州立公文書館などで入手しました。時間的な問題からアウトバーンと風景画の考察を行い、別府大学紀要にまとめました。また一方でドイツ第三帝国下の体制派美術を公にする展覧会についてコロナ以前にも確認していましたが、ちょうどオランダ・アルネムで行われていたため、その展覧会に足を運び、体制派美術作品の展示趣旨と目的を確認し、美術史への位置付けを考察しました。加えて積極的に体制派美術の展覧会を行なってきたオーストリア・グラーツの美術館学芸員ホラー・シュスター氏とコンタクトが取れ、それまでの展覧会のコンセプトなどについてインタビューを実施しました。その結果を同大学院紀要にまとめました。本来計画していた課題は現地調査を前提とするために、初めてのコロナ対応によってそれができず、資料の限定によって質的に問題があるものの、電子データに頼るという日本で考察できる方法をとらざるをえませんでした。また国内での移動も制限され、より一層和書の資料収集がむずかしい状態に置かれました。それでも研究を止めることなくできうる方法によってすすめることで、新しくアウトバーンとの風景画に注目することも加わり、想定していた結論を提示することができました。また関連展覧会からみた体制派美術の評価の取り組みも、まとめることができました。ただし当初予定していた画家をとおした考察は、最終年度の資料収集となったために時間的な問題から課題として残されました。これについては今後考察をすすめて仮説を裏付ける証左にしたいと思います。
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