本研究課題最終年度である当該年度は、前年度までにCOVID-19感染状況に起因する諸事情により開催を見送らざるを得なかった研究成果発表機会としての公開演奏会に関して、何らかの形で(例えば対面でのコンサート開催が困難な場合、配信による対応を選択肢とすること等も含め)実現することを必須課題として設定し、その準備を中心として研究計画を進めた。具体的にその作品制作自体の課題として設定したのは、前年度までに試行的に制作してきた大小様々な方法論的素材に基づく、一定以上の時間規模を持つ大規模アンサンブル編成のための器楽作品である。(最終的に20名の奏者による室内オーケストラ作品として発表。小鍛冶邦隆指揮、Ensemble REAM、演奏時間:24分) 上述の、前年度までに制作した試行的な素材群に関してより具体的には、微分音を含む音高組織群について、特に近年用いている四分音と六分音による音程関係を含む特徴的な構造(例えば聴感覚上の特徴等も含め)等による何らかの着想から出発して制作した多数の作品素材を使用することになったが、それらは、その音高組織の特徴的な構造を抽出する等の処理を伴うCAO「コンピュータ支援作曲」に基づく、様々な規模のコンピュータプログラム等を含む。 そこから連鎖的に「生成」される(多くはより大規模な)素材に基づく時間の構成等、素材自体による検討の延長上に具体的な楽曲(器楽作品)を構成することを計画したが、その大もとの素材自体としては近作と共通のものを多く含み、楽曲構成上の「実施」により現れる形態の類型(組織化に際しての類型的な扱いの検討)として位置付けられる。 その類型の扱いをより一般化して素材の「資源」として整理するためのある種の「定式化」(としてのプログラム構築)や、そのより現代的水準での処理方法の実装、より個人的文脈に限定されない応用可能性等の検討は、今後の継続課題となる。
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