研究課題/領域番号 |
20K00211
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
三枝 一将 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (60529949)
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研究分担者 |
桐野 文良 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (10334484)
平 諭一郎 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10582819)
古川 聖 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40323761)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音響彫刻 / バシェ / 保存 / 修復 / アーカイブ / 3DCAD / 芸術資源の活用 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、現在東京芸術大学取手校地に保管されている残存部材のの採寸調査と、3DCADデータ化を進めた。また、修復された「勝原フォーン」の継続的かつ作品負担の少ない活用に向けて、組立て指示書と演奏者に向けた演奏ガイドの動画を作成した。これらを、木枠梱包状態の「勝原フォーン」の部品と共に、「再演ー指示とその手順ー」展(東京芸術大学大学美術館2021/8/31~9/26)にて展示し、芸術作品の再現・再演の諸問題の中で、バシェ作品が孕む活用についての問題意識を広く問うことができた。年度末に開催した研究会では、バシェ作品の継承をテーマとして、分担研究者の平諭一郎氏、岡田加津子氏(京都市立芸術大学教授)、永田砂知子氏(バシェ協会会長)、川崎義博氏(京都市立芸術大学客員研究員)から発表が行われ、仁科エミ氏(放送大学教授)、原久子氏(大阪電気通信大学教授)、柿沼敏江氏(京都市立芸術大学名誉教授)、中川克史氏(横浜国立大学准教授)のほか、多彩な研究者や関係者らと意見交換を行うことができた。この場で特に共有されたのは、バシェ作品の保存管理の特殊性であった。従来の美術館による収蔵、保存、管理システムでは、演奏による活用の側面には対応できず、積極的な活用は、管理、保存、修復を包括した専門的な担当者のもとで行われるべきである。1970年の大阪万博のレガシーでもあるバシェ作品という芸術資源を、より多くの人に「開き」、継承していくためには、既存の方法に囚われない特有の方法を導き出す必要があることが研究会の中では共有された。また、バシェ作品についての問題は、多様化する芸術資源をいかに継承してくかという、現代の共通の課題でもあると認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引き続き、新型コロナウイルスによる移動制限のために材料分析調査が遅れている。また、残存部材の3DCAD化においては、コーン部の形状的歪みが想定よりも大きいため、コーン部の現状を3Dスキャンすることとした。そのため、部材のデータ完成には、今暫く時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後に向けて、デジタル化された作品情報のアーカイブ方法と公開の方法についてアーキビストを交えて検討進める。バシェ作品の所有者である大阪府と大阪万博記念公園の状況を鑑みた、より具体的な保存方法について検討を行っていく。そして、アーカイブと作品(もの)を包括した継承のための試論をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響による移動制限で、作品部材の材料分析調査を行うことができなかったため、本年度に実施する。京都、大阪への旅費と謝金に充てる。
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