研究課題/領域番号 |
20K00214
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
丸田 伯子 一橋大学, 保健センター, 教授 (50343124)
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研究分担者 |
東 ゆかり 鎌倉女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60442133) [辞退]
満山 かおる 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (80791681)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | POMSによる心理的評価 |
研究実績の概要 |
2022年8月から12月にかけて研究代表者らは研究協力者の協力を得られる単科精神病院において音楽療法を実施した。すなわち、外来患者と病棟患者を対象として、ほぼ10週間にわたり(祝日がある場合は隔週の実施となった)デイケア用の部屋においてグループ音楽療法を実施した。対象者を募集する際に研究としてデータを収集する旨を書面で説明して自筆の同意を得た。参加は継続的に行われる場合が多かったがその場合でも参加回数は個人により異なった。covid19の感染拡大予防の観点から病院の方針に従う必要があり、外来患者と病棟患者が接触しないように別々のセッションを設定した。すべての参加者に、毎回音楽療法セッションの開始前と終了後に自記式の問診票に回答をお願いした。 音楽療法は1回につき50分程度実施、各回の参加者は概ね3ないし6名程度とばらつきがあった。毎回、円形に椅子を並べ講師が中心となるよう半円状の形を成した。前半は能動的な音楽療法で、全員が手に持った単音のプリムライアーで講師の指示により音を奏でる体験をし、参加者の音が皆異なっているため順番に音を奏でることでハーモニーが形成された。また、講師の指示で隣の参加者と協力して音を出し、他の参加者に任意に目線で次の音を出すようにとメッセージを伝えることもあった。後半は講師のライアー演奏を聞くという受動的な音楽療法を経験した。 2023年5月以降、得られたデータを分析して考察を行っている。延べの参加人数は53名、外来/入院、男/女について大きな偏りはない。実施したPOMSの尺度ごとにまとめているが、総じて怒りや敵意、抑うつや落ち込み、疲労や無気力、緊張や不安の尺度については全体として得点数が減点方向にシフトしている。また、活気や活力、友好を示す尺度は得点は減点していない。さらに詳細を分析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
covid-19により医療機関における臨床研究の実施を準備する段階で大きな制約があったため実施が大幅に遅れた。実際には、デイケアにおける音楽療法の企画が可能となったのは当初計画の最終年度に当たる2022年度であった。また、実施にあたっては、全員に個別にしようしてもらう楽器を調達し、感染予防の観点から毎回楽器の消毒を行い、個人もちとして多数を用意した。外来患者と入院患者を同じセッションに含めることも予定していたが感染拡大予防の観点から別にする必要があり、講師の調達に工夫を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施した延べ参加者53名のデータを分析して、それを下に研究成果の発表を行う。また、2023年度もこれまでの参加者からのコメントを参考にして、同じ機関で音楽療法を実施して将来的に持続可能な実施方法について考察する。2022年度の実施して検討した点として、参加者が能動的に演奏するために用いられたプリムライアーは単音の楽器であったため、参加者が思うような演奏をしたとはいえず、些か物足りない感想につながったことが考えられた。2023年度は人智学的音楽療法の枠内でアレンジを加え、単音のプリムライアーの使用のみに拘らず、歌うことや他の楽器も適宜使用する機会を挿入するなど、参加者の多様な興味を尊重できるように工夫することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19感染拡大の影響により、当初予定されていた海外への出張、海外からの研究協力者の招聘、海外への学会参加などが全て見合わせとなった。また、国内の医療機関において音楽療法を実施できる医療機関が見当たらず、実施時の謝金なども支払いすることができなかった。 上記を踏まえ、2023年度は音楽療法の継続実施を行う際に必要となる講師謝金、実施先の医療機関における必要経費、さらに研究成果発表に関わる学会発表経費、資料作成、文献追加購入、さらに人智学的ないしドイツにおける音楽療法に特化したセミナーや研修会への参加に充てる予定である。
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