研究課題/領域番号 |
20K00214
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
丸田 伯子 一橋大学, 保健センター, 教授 (50343124)
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研究分担者 |
東 ゆかり 鎌倉女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60442133) [辞退]
満山 かおる 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (80791681)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 音楽療法 / 集団療法 / 弦楽器ライアー / 人智学 / シュタイナー |
研究実績の概要 |
研究計画に基づき、精神科医療機関において、倫理審査を経て、入院と外来の患者を対象に参加者をリクルートし、参加者の研究同意を得た。covid-19の感染対策をするために入院患者と外来患者は別々に行うこととして2022年9月から12月まで、概ね週1回のペースで毎回45分間、計10回の集団音楽療法を実施した。実施するにあたり、音楽療法を担当する講師としては人智学的音楽療法の実績を有するアントロポゾフィー音楽療法士に依頼した。参加者は31名であり、うち入院が14名、外来が17名であった。また年齢層は19歳から74歳、性比は男性14名、女性17名であった。診断名は気分障害、発達障害が中心であった。参加者したスタッフは、音楽療法士、公認心理士、医師が各1名、心理もしくは看護の実習生2名であった。 心理検査としてPOMSを選定し、音楽療法の実施前後にPOMS短縮版に記載してもらった。POMSには8種の評定尺度がある。これらの尺度を数値化し、実施前後に得られたT得点を検討した。評定8尺度のうち、7尺度において、療法参加の前後で比較したT得点の平均値に有意な差が認められた。有意な差を認めなかった尺度は活気・活力の項目であった。有意な差を認めた7尺度のうち、6尺度はネガティブな尺度(怒り・敵意、混乱・当惑、抑うつ・落ち込み、疲労・無気力、緊張・不安)であるが、これらは音楽療法実施後に有意に低下した。ポジティブな尺度(友好、活気・活力)は実施後に上昇しており、友好については有意であった。 参加者は必ずしも全回参加ではなかった(途中で退院や就労に至ったケースも含まれる)。一部の患者は4回以上参加したが、彼らは活気・活力及び友好が上昇する傾向があった。このような音楽療法の場があることで、繰り返し参加する群の場合、集団療法として心理的に意義のある時間・空間の提供となることを示唆すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度から2021年度まではcivid-19の感染対策を最優先すべき事態となっており、海外での調査も渡航や医療機関の制約により中止せざるをえず、国内においても医療現場での音楽療法の実施について許可を得ることが困難であり、研究計画の大幅な見直しが必要となった。しかし2022年度以降は徐々に医療機関において外部機関の立ち入りが感染防止策を徹底して行うことを条件に許容されるようになったため、集団音楽療法を実施することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
医療機関における集団音楽療法を実施することについて、特定の医療機関をフィールドとして継続できる可能性があることがわかった。そのためには特定の医療機関において空間と時間を確保するという構造的な可能性、また参加者の音楽療法に対する動機やニーズの把握、集団音楽療法を実施した後の主観的ないし客観的な意義、などが着目すべき観点と考えられる。これらの視座を併せて、これまでに得られた成果をもとに原著論文を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度及び2023年度は医療機関において集団音楽療法を実施したが、年度途中から使用できる部屋が限られることになり、当初予定の頻度(月に数回以上)で実施することが困難となった。人智学的音楽療法士のスケジュールも調整が必要となり、併せて調整したところ、次年度に計画を延長するという結論に至った。そこで2024年度も研究を継続することとした。
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