研究課題/領域番号 |
20K00215
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
清水 香 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (30599436)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 石膏型 / 成形技法 / 泥漿 |
研究実績の概要 |
本年度は、陶芸造形における成形技法のなかで型を用いた技法を精査した。石膏型を用いる「鋳込み成形」以外の成形方法である轆轤を用いて回転体をつくる「轆轤成形」や板状の土を用いる「板づくり」のなかでも石膏型が使われており、その方法は多岐にわたっていることを確認した。他に、現代陶芸の作家がどのような成形方法で作品づくりを行っているのかまとめるなかで、手で土を捻っていく「紐づくり」の応用として、石膏型を用いた成形物と組み合わせる方法も見られる。これは、古来より続く基本的成形技法を続ける作家とは違い、道具の進歩や機械化による変化を受け入れて独自の技法を確立しているといえる。 また、2005年から追求してきた革新的技法が、現代的陶芸技法のなかでどのような位置にあるのか明らかにするため、現代的陶芸技法の到達点を把握し、泥漿表現の可能性を考察した。そのなかで、本研究で追求する泥漿は、鋳込み成形時の型の形状を写しとるための泥漿としてではなく、泥漿自体が主体となり形を形成することが可能であることがわかった。その制作工程を分類すると、①柄杓で撒くという方法、②直接手でかき混ぜるという方法、③型の隙間に流し込むという方法、④型に押し付けるという方法、の4つに分けることができる。しかし、少なからず形を維持するためには支持体となる型が必要であり、沿わせる面積を極力少なくする形状の成形は可能かどうか検討が必要である。また、色味や滑らかさの吟味と収縮率を抑えた泥漿を作るために、土の種類の選定や解膠剤の種類、解膠剤の分量、添加する水分量の実験を今後進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、滋賀県や長崎県など陶磁器産地へ赴き、陶磁器原料の収集を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染が拡大したことにより、県外移動を自粛せざるを得ない状況であった。そのため、本年度に行う予定であった調査へ行くことができておらず、調査で収集した原料を元にした実験も行えていない。 石膏型を用いた現代的陶芸技法については、資料による調査から古来より続く成形技法に石膏型を組み合わせる方法が多く使われていることが分かっている。また、本研究による制作物の変遷を追うことで、素地の状態による成形物の視覚的変化が現れることがわかっているため、原料の調合など今後検討すべき視点は得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの状況を見極めながら、滋賀県や長崎県への移動可能であれば現地調査を行う。状況悪化により移動を自粛しなければならない場合は、遠隔地における資料調査をどのように進めるべきか検討し、オンラインやWebを通した情報収集なども視野に入れていく。 現地調査の方法は、以下の2点を考えている。1点目は、陶器産地と磁器産地それぞれにおいて用いられている成形技法を、資料館や試験場、作家工房の訪問により調査する。なかでも、伝統的に受け継がれてきた技法と、量産を求めた工業的技法の2つの面から、その役割と方法、適した材料についても調査する。その際、課題を多く抱えている産地の現状も聞き取り調査する。2点目は、可塑性をもつ流動体を可能にする原料の調査である。色味や粒度、耐火度、金属酸化物等の含有量を中心に土の選定を行い、組成分析により数値化し比較する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、滋賀県や長崎県など陶磁器産地へ赴き、陶磁器原料の収集や各種技法の聞き取り調査を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染が拡大したことにより、県外移動を自粛せざるを得ない状況であった。特に、調査地である滋賀県は緊急事態宣言が発令していた大阪府を経由すること、また調査地の長崎県は同じく緊急事態宣言が発令していた福岡県を経由するため、移動後の自身や大学、家族への影響が大きくなることから調査を断念したことが理由である。 次年度使用額は、新型コロナウィルスの感染拡大状況を見極めながら、本年度に行うことができなかった陶磁器産地において用いられている成形技法の調査や原料を収集する旅費に充てる。
|