研究課題/領域番号 |
20K00221
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研究機関 | 武蔵野音楽大学 |
研究代表者 |
中川 俊宏 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 教授 (60459972)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 指定管理者制度 / 文化施設 / 博物館 / 劇場・音楽堂 / 専門人材 / 学芸員 / 企画制作 |
研究実績の概要 |
本研究は、博物館や公立文化施設の専門人材の確保という観点から、その業務遂行上の問題の解決を目指すものであり、同時に施設利用者である市民にとっての不利益の解消にもつなげるものである。今日、専門人材を必要とする文化施設が指定管理者制度において直面している大きな問題を、「公益性と営利の二律背反(不安定・低賃金の雇用)」「業務の継続性・連続性の不確実(長期的企画の立案や人材育成の困難)」の2つと考え、その解決のための方策を考察し、文化施設が専門人材を活用して高い専門性を発揮しうる道を探り出すことを目指している。博物館や公立文化施設などの創造的な活動を行う文化施設には、施設(facility)と機関(institute)の二面の性格があるという先行研究を踏まえ、現状において全国の博物館や公立文化施設がどのように指定管理者制度と専門性の折り合いをつけているかを調査し、この制度の本来の趣旨から外れることなく、持続的に運用しうるシステムを検討し、提案することを研究の目的としている。 調査研究の実施内容は概ね以下のとおりである。①博物館における学芸員、劇場・音楽堂等における企画・制作スタッフの雇用の実態を、施設運営者と設置自治体の双方を対象に調査する。②専門人材活用における指定管理者制度運用上の問題点と、問題解決の試みを整理・分析する。③博物館と劇場・音楽堂等を比較対照しつつ、それぞれに有用な問題解決方法を考察する。 当該年度は、全国の公立博物館・美術館・資料館等へのアンケート調査と回収結果の集計・分析を行う予定であった。上記施設における学芸員の所属と雇用状況、所管の行政機関との関係、現在の運営上の問題などを情報収集するためのアンケート調査用紙の送付までは行えたが、回収結果の集計・分析や一部回答者へのヒアリング調査までは、残念ながら実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4年計画の初年度にあたる当該年度は、①全国の公立博物館・美術館・資料館等へのアンケート調査、②アンケート回収結果の集計・分析、③アンケート調査回答者の一部へのインタビュー、を主な実施予定としていた。 ①のアンケート調査の実施においては、まず調査用紙送付先リストの作成を、学生アルバイトを活用して進める予定であったが、新型コロナウィルス感染症拡大による大学の授業のオンライン化によって、これが難しくなり、研究代表者が進めることとなった。また研究代表者自身も、オンライン授業対応などで例年以上に業務が繁忙になり、発送先リストの作成が大幅に遅れることとなった。アンケート調査用紙の封入作業もまた、学生アルバイトの活用を予定していたところであったが、同様の事情で年度内に発送を終えることがかなわなかった。 次年度に入った令和3年4月には、初年度分のアンケート調査用紙の発送を終えることができたが、②の集計・分析、ならびに③のインタビューも次年度への持ち越しとせざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2年次にあたる令和3年度は、初年度に終えることができなかった、全国の公立博物館・美術館・資料館等へのアンケート調査の回収結果の集計・分析をまず行う。さらに、当初の予定であった全国の公立博物館・美術館・資料館等の設置自治体(行政機関の担当課)へのアンケート調査を行い、その回収結果の集計・分析を進める予定である。主な質問項目は、指定管理者制度ないしは直営を選択した理由、指定管理者制度導入にあたっての公募・非公募の選択理由、学芸員の所属とそれについての考え、現在の制度運用上の問題などである。また、回答者の一部へのインタビューについても、新型コロナウィルス感染症の収束を待って実施したい考えである。 以後は当初の予定どおりに進める。3年次にあたる令和4年度は、全国の公立文化施設(劇場・音楽堂)へのアンケート調査を行い、その回収結果の集計・分析を進める。主な質問内容は、自主事業実施の有無、指定管理者制度導入状況、企画制作担当スタッフの雇用状況、現在の運営上の問題などである。 最終年次にあたる令和5年度は、全国の公立文化施設の設置自治体(担当課)へのアンケート調査を行い、その回収結果の集計・分析を進める。主な質問項目は、指定管理者制度及び直営選択の理由、指定管理者制度導入の場合の公募・非公募の選択理由、企画制作スタッフの所属とそれについての考え、現在の制度運用上の問題などである。 3年次以降も、アンケート調査回答者の一部へのインタビューは行う予定であり、最終的には、全調査データを分析・考察し、提案をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症により、当該年度に予定していたアンケート調査の封入・発送業務に大幅な遅滞が生じることとなった。そのため、当該年度に発注していた封筒の購入費の経費112,420円等の支払いが次年度に回ったことをはじめ、学生アルバイトを活用して学内で進める予定であった作業にかかる経費や、アンケート回答者へのインタビューに関わる出張経費等が未使用となった。 当該年度に実施がかなわなかった業務は原則として次年度以降に持ち越して実施していく予定であり、新型コロナウィルス感染症の収束状況を注視しつつ、助成期間内において助成額全額が使用されるよう調査研究活動を進めていく考えである。
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