研究課題/領域番号 |
20K00231
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
山名 仁 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00314550)
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研究分担者 |
筒井 はる香 同志社女子大学, 学芸学部, 准教授 (20755342)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ペダリング / アスタリスク / プレイエル / ウィーン式フォルテピアノ / ショパン / アーティキュレーション / ダンパー |
研究実績の概要 |
本年度研究者はショパン存命中に製作された1841年製プレイエルを入手し、①ペダル記号とアスタリスクの正確な位置を把握しながら、onとoffの演奏効果について考察する、②ペダルを踏む指示がない箇所の音響効果を探る、③響きの濁りがあえて意図されていると考えられる長めのペダル指示の演奏効果を探る、といった研究をショパンがパリに移住した後に出版された作品について、網羅的に行った。その結果、ペダルの指示がない箇所、あるいはほとんどペダル指示のない作品について、当初予想した残響効果よりもはるかに乾いた響きとなることが確認できた。その要因としては次の2つが考えられる。①本研究者は、特にパリ移住以降のショパンの作品について、指示された箇所以外の箇所においてもペダルを多用する現代のピアノによるショパンの演奏法に慣れてしまっている。したがってペダルを伴わない場合の響きにあまりにも慣れていないために、適正な鍵盤上における指の保持という演奏テクニックの練度がまだ低い状態である。②本研究者は1830年代から1840年代の様々な製作家のピアノを試奏している。残響の多い少ないについては楽器によってかなりのばらつきがあり、残響の多い楽器においてはペダルの使用はかなり限定的であっても良いとの実感を持っている。一方で今回本研究者が入手したプレイエルは、ショパン存命中の時代の楽器としては、どちらかといえば残響の少ない部類に入ると考えている。研究者としては元来もう少し残響がある状態であったのではないかと考えているが、本年度はショパンのペダルの指示がない箇所について現代のピアニストであれば確実にペダルを追加して演奏する箇所が多数存在するノクターン第4番Op.15-1を採り上げ、録画をyoutubeにアップした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響で国内外のショパン存命期に製作されたプレイエルまたはウィーン式フォルテピアノのペダル機構、ダンパーの調整法について修復家の考えを実際の楽器に触れながら聞き取り調査することができなかったためである。研究者は昨年度1841年製プレイエルを入手し、ショパンのパリ時代の作品について本格的な演奏研究に入ることができたが、この時代のピアノは調整次第ではアンティークピアノとして現代のプレイヤー向けに調整されてしまっている可能性があるため、本来であれば、海外の修復家のペダル調整についての意見を調査し、検討した結果に基づいて自身が所蔵するプレイエルの調整を行い、演奏研究に入ることが理想と考えている。しかし、これができなかったため、現在本研究者が所蔵するプレイエルのダンパーの調整はやや止音効果が強めになっていると感じている。これが研究を遅らせている大きな要因となっている。しかし2023年度は海外調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行したことによって、本研究者も国外調査旅行が可能になったと考えている。まずは研究者所蔵のプレイエルのダンパーの止音効果と海外の修復された同年代のプレイエルのダンパーの止音効果を演奏によって比較する。止音効果がほぼ同じと判断された場合は、ショパンのペダリングあるいはアーティキュレーション法についてこれまで通りの方法を精度を上げる方向で研究を進める。この場合、ペダルを使わないことによって起こってくるアーティキュレーションについては、これを演奏効果の一部として取り込む方向を検討していくこととなる。一方で海外のプレイエルのダンパーの止音効果にばらつきがあると判断された場合には、それぞれの修復法について修復家に聞き取り調査を行い、修復法の妥当性について検討する。このうち最もショパンの演奏に適していると考えられた修復法についてはこれを参考とし、帰国後日本の修復家と協力して、ダンパーの止音効果の最適化を図る。この場合にはペダリングとアーティキュレーション法の双方の再構築が必要となってくる。 演奏研究成果のyoutube への録画のアップは、海外調査とその後のペダル効果の調整をする以前でも継続して行い、調整前と調整後の演奏の相違について比較検討し、研究成果の一部とする予定である。 なお本研究は4 年目の最終年度となっているが、コロナ禍によって海外調査ができなかったことから、1年の研究期間の延長を申し出る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で基礎疾患を持っている本研究者は海外調査ができなかった。2023年度はこれをおこなう予定である。
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