研究課題/領域番号 |
20K00236
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大寺 雅子 日本大学, 芸術学部, 准教授 (70581049)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 演奏不安 / パフォーマンス不安 / マインドフルネス / 音楽学生 / 芸術系学生 / mPEAK / メンタルトレーニング / 混合研究 |
研究実績の概要 |
2020度の研究実績は以下の通りである。 1)演奏不安に関連する資料・文献を収集し、それら文献のレビューを行った。文献レビューを通じて、演奏不安への介入方法として必要とされるトレーニングプログラムとマインドフルネスの応用可能性について検討した。 2)本研究で採用するトレーニングプログラム(Mindful Performance Enhancement, Awareness & Knowledge: mPEAK)の実施準備のために、マインドフルネス関連の2つのオンラインプログラム(mFLEX、mFLOW)を受講することにより、mPEAKをオンラインで効果的に実施するための方法を学ぶことができた。 3)mPEAK指導者の許可を得た上で部分的ではあるがmPEAKを芸術系学生に試行し、プログラムの実施方法、手順、修正点や問題点などについて予備的検討を行うことができた。もともとmPEAKはアスリートを対象として構築されたプログラムだが、参加した芸術系学生の評価はおおむね好評であり、mPEAKの芸術系学生への適応を確認することができた。 4)3)の参加者を対象に、mPEAKの効果検証に使用予定の評価尺度であるFFMQ-J、MAIA-J、STAI、TAS-20をパイロット試行および結果の分析を行うことで、これら尺度の使用方法、分析方法、問題点などを検討することができた。 5)3)の参加者を対象に、プログラム参加体験に関するインタビューを実施し、得られたデータの分析作業を行った。その作業の中でmPEAKの参加体験に関する質的分析方法について検討し、質的研究の専門家によるコンサルテーションを受けることで本研究で用いる質的分析手法を決定するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行に伴い、mPEAKの指導者トレーニングプログラムが延期されたため、全体的な研究計画に遅延が生じている。mPEAKの実施資格を得るためには指導者トレーニングプログラムを受講する必要がある。しかし、2020年8月に米国サンディエゴで実施される予定だったmPEAK指導者研修が延期され、渡米することもできなくなった。また、mPEAK指導者研修に引き続いて行われる予定だったオンラインによる指導者実習も主催者の都合により延期となった。結果的に介入研究の開始は、当初の計画から6-8か月程度の遅れとなりそうである。また、当初の計画ではmPEAKを対面で実施する予定だったが、感染症の流行状況を勘案してオンラインに変更せざるを得なくなり、オンラインによる実施方法を検討する必要性が生じた。以上のことから、mPEAKの介入研究の計画フローとmPEAKの実施方法を検討し直す必要性が生じたため、2020年度後半に予定していた研究倫理委員会への申請ができていない。全体の研究計画に遅延が生じているものの、「研究実績の概要」の項で述べた通り、関連文献のレビュー、mPEAKのパイロット試行、評価尺度の検討など2020年度中に実施可能であった作業については遂行することができた。延期されていたmPEAK指導者トレーニングプログラムについては2021年度中に実施される見通しが立ったため、研究の遅れを取り戻すことが可能であると考えており、研究の進捗状況については「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度:(前半)前年度より取り組んできた演奏不安とマインドフルネスに関する文献レビューの結果を論文にまとめ、学術誌に投稿する。延期されていたmPEAK指導者研修を6月に受講する。(後半)オンラインによるmPEAKのパイロット試行を行い、本研究でのmPEAKの実施方法を確定する。10月から10週間に渡る指導者実習を受講し、mPEAKの実施資格を得る。その後、スケジュールに影響しないようであれば、mPEAK指導者によるスーパービジョンを受ける。研究倫理委員会に本研究の申請を行い、委員会の承認が得られた後に研究参加者の募集を行う。年度末までに介入研究の開始し、まずは研究参加者にプレインタビューを行う。 2022年度:(前半)mPEAKを実施し、終了後にポストインタビューを行う。(後半)研究結果を分析し、関連学会で発表する。ポストインタビュー終了後から3か月後にフォローアップインタビューを行う。研究結果の分析を行い、得られた知見を演奏不安のためのプログラムとしてまとめた上で関連学術誌に投稿するために論文の作成を開始する。 2021年度は、感染症の流行状況に左右されにくい計画のもとで研究を進める予定である。ただし、未だに状況が流動的であるため、2021年度の研究計画がさらに後ろ倒しになった場合には、介入研究とデータの収集・分析までを2022年度末までに終了することを目指し、研究成果の発表は2023年度に行うものとする。なお、当初の研究計画ではmPEAKを対面で実施することを想定していたため、感染状況に改善が見られた場合にはオンラインから対面にmPEAK実施方法を切り替える可能性も残している。ただし、対面かオンラインかの判断が難しい場合には、研究期間内に一定の成果を得ることを優先するためにオンラインにてmPEAKを実施することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、1) 2020年度に米国サンディエゴで開催予定だったmPEAK指導者トレーニングプログラムが延期されたこと、2) 海外渡航ができなくなったこと、3) mPEAK指導者研修がオンライン開催になったこと、などの理由から未使用額が生じるに至った。延期されていたトレーニングプログラムは2021年度中にオンラインにて実施されることになったため、その参加費用として未使用額を充てる。また、当初の研究計画ではmPEAKを対面で行う予定であったが、感染症の流行状況を勘案してオンラインにて実施する必要性が生じたため、オンライン配信用機材(タブレット端末と周辺機器)を購入するために未使用額を使用する。なお、2021年度請求分については、可能な限り当初の使用計画に基いた予算執行に努めたい。
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