研究課題/領域番号 |
20K00237
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
森 立子 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (40710843)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バレエ音楽 / アーカイブ |
研究実績の概要 |
本研究は「バレエ音楽」を対象としたアーカイブ構築の実現を目指し、その基礎を築くべく進められている。研究の主要資料となるバレエ音楽の楽譜は、現在入手可能なものについて、今年度も継続的に収集作業を行った。 一方、前年度より、19~20世紀の主要バレエ作品について複数存在するヴァージョンの比較を試みており、その都度の上演に合わせて加えられる様々なレイヤーでの改変例が具体的に明らかになってきた。しかしこの作業は同時に、アーカイブ構築を考える際の大きな問題点を浮き彫りにもしている。すなわち、今日でも頻繁に上演される主要レパートリーであればあるほど、ヴァージョン間の異同に関する情報を網羅的に収集・提示することが困難であるという問題である。よって、実現可能で、かつ今日の舞踊研究・音楽研究に資するアーカイブの構築を目標とするのであれば、アーカイブ化する情報の取捨選択が必然となる。この取捨選択に際してどのような基準を設定すべきであるのか。この基準設定に際しての理論化作業を行うことが今後の喫緊の課題である。 また、研究を進めるにつれて、「バレエ音楽」というカテゴリーの外延をどこに定めるかという問題に取り組む必要性もより強く認識されるようになっている。「バレエ音楽」と一口に言っても、最初からバレエ上演を目的として作曲された音楽のみが含まれるわけではなく、より多様なケースがそこに含まれうる。この多様なケースを整理し、「バレエ音楽」の定義をより精緻化することが次年度のもう一つの課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により、前年度同様、関連領域の研究者・専門家(特に海外の研究者)との意見交換の機会を設けることが難しく、当初の計画とは異なる形で研究を進めざるを得ない状況が続いている。研究者・専門家との情報交換の場として「バレエ史研究会」を開催することは、本研究における重要な活動の一つであるのだが、これについては今年度すべてキャンセルという結果となった。 しかしながら、「バレエ音楽」に関する文献資料、楽譜資料の調査・検討については、コロナ禍による影響を被ることなく進行している。この作業において、研究開始当初は認識していなかったいくつかの問題(「バレエ音楽」というカテゴリーの外延の問題など)も浮かび上がっており、今後これに取り組むことにより、当初予測されなかった問題体系にも本研究が接続していくことが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も文献資料・楽譜資料の調査・収集は継続して進める予定である。ただし、これまで19世紀から20世紀初頭の作品を調査の中心に据えてきたが、今後は18世紀の作品も対象に含めて調査を進めたいと考えている(「バレエ音楽」というカテゴリーの再検討のためには、ロマンティックバレエ以前のバレエ音楽を除外した形で考察を進めることは不可能であるため)。なお、18世紀の舞踊音楽の問題にも言及しているJ.-G.ノヴェールの舞踊理論書『舞踊とバレエについての手紙』の翻訳および解題(単著)を、今年度中に出版予定である。また、今年度は対面形式とオンライン形式を併用することにより「バレエ史研究会」を再開することを計画している。これと併せて、研究会のホームページの内容の更新を行い、研究成果の社会への還元をより推進していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度も、コロナ禍の影響で、海外での資料調査を見合わせざるを得ない状況であった。また、当初実施予定であった研究会もすべてキャンセルという結果となった。よって、これらに伴う経費が年度内に使用されずに次年度に繰り越しという形になっている。次年度は社会的な状況を見すえつつ、可能な時期に海外資料調査と研究会の開催を実現したいと考えている。また、研究会のホームページの大幅な情報更新を計画しており、人件費の枠内でその更新作業を外部に委託する予定である。
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