研究課題/領域番号 |
20K00238
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
蔡 美京 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (40867222)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 韓国伝統舞踊 / 朝鮮総督府 / 日韓併合時代 / 太平舞 / 韓国宮中舞踊 / 宮中衣装 / 李王職雅楽部 / 韓成俊 |
研究実績の概要 |
①『アジア文化』に「韓国重要無形文化財≪太平舞≫の衣装と装束の検証」本論文では、日韓併合時代に創作された≪太平舞≫が政治的背景により朝鮮王朝の王の衣装を着用することが出来なかった背景と創作者の意図を考察した。②『比較舞踊学会大会』シンポジウム「韓国(朝鮮)伝統舞踊(歌舞楽)における女楽・男楽の検証」では、朝鮮王朝時代に宮中で女楽と男楽が区別されて使われたが、併合時代は女楽が排除され男楽は李王職雅楽部となり朝鮮総督府管轄下で行われた経緯を考察した。③『比較舞踊研究』事例報告の「韓国(朝鮮)伝統舞踊における女楽・男楽の一考察」では、朝鮮は女楽を拒否した明の使節の前と他国使節前での宴で、男楽・女楽を使い分け、朝鮮の伝統を守る為の政策と背景を『朝鮮王朝実録』を基に考察した。④「韓国文化において『白』が表象するものとは何か―サルプリ・チュムを事例に―」では、白磁、白衣は朝鮮民族の象徴でもある。舞踊での白衣は、「クッ」という巫女の儀式で着用したことから、舞踊では人間の喜怒哀楽を表現する≪サルプリ舞≫に用いられるようになり併合時代以降も老若男女問わず白衣を日常服とした。⑤シンポジウム、「近代東アジアにおける伝統芸能の変容」を題材に小林敦子は「建国音頭-国策盆踊りに埋め込まれた1940年の日本」で、紀元二千六百年奉祝芸能祭における「建国音頭」には、新民謡、遊戯舞踊、盆踊りといった当時の日本文化の要素が内包されていたことを考察した。飯島典子は「台湾人形劇(布袋劇)」において純然たる芸能としての近代化と、総督府による統制が人形劇に与えた変化を考察した。蔡美京は、「韓国伝統舞踊と新舞踊の相克」で、日韓併合時代に外来文化が日本経由で朝鮮に流入し、伝統舞踊・芸能の衰退が懸念された状況を当時の新聞記事から明らかにし伝統舞踊を継承してきた韓成俊の創造活動を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①『アジア文化』(第43号)に「韓国重要無形文化財≪太平舞≫の衣装と装束の検証」論文を投稿した。②招聘を受けた『比較舞踊学会大会』(第32回)シンポジウムにおいて「韓国(朝鮮)伝統舞踊(歌舞楽)における女楽・男楽の検証」を対面で発表した。 ②事例報告では、『比較舞踊研究』(第29巻)に、「比較舞踊学会大会」のシンポジウムで発表した課題を題材に「韓国(朝鮮)伝統舞踊における女楽・男楽の一考察」を事例報告として掲載した。④招聘講演では、「韓国文化において『白』が表象するものとは何か―サルプリ・チュムを事例に―」を発表した。⑤科研費3年目の成果報告として実施したシンポジウムでは、科研費研究協力者と共に「近代東アジアにおける伝統芸能の変容-日本、台湾、朝鮮半島を事例に-」をテーマに成果発表を行った。 「韓国伝統舞踊と新舞踊の相克」では、日韓併合時代に外来文化が日本経由で朝鮮に流入し、伝統舞踊・芸能の衰退が懸念された状況を新聞記事から明らかにし伝統舞踊を継承してきた韓成俊(ハン・ソンジュン)の創造活動を考察した。 コロナにより、二週間の隔離などもあり大変な状況の中で韓国に研究出張に行くことが出来、多くの先生方のご協力を得て、資料収集、取材、舞踊実演指導を受けることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
①公開講演:「日本伝統芸能教育普及協会むすびの会」で招聘講演を行う。 当該協会は、日本の伝統芸能を若い世代に継承することが困難な状況であることから、隣国の韓国で若い世代に伝統芸能がどのように継承されているかについての講演を企画した。 「韓国現代のK-POPにみられる伝統芸能の要素」と題して、伝統芸能(舞踊・音楽・歌・楽器)とK-POPのパフォーマンスを映像分析し、K-POPのパフォーマンスに伝統芸能の要素がどのように反映されているかを考察する。②研究出張: 韓国で地域の舞踊をはじめとする伝統芸能継承者へ取材を行う。2022年度までに収集した資料と取材により得られた知見をもとに、今後の課題に必要となる資料を確定し、舞踊実演指導を受ける。 ③投稿論文:近代化が進む日韓併合時代に朝鮮に流入した外来舞踊の影響力が強まる中で、朝鮮伝統舞踊がどのように伝承されたか、その時代の舞踊の状況を新聞記事などのデータを基に分析、考察し論文を投稿する予定である。
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