研究課題/領域番号 |
20K00241
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
一ノ瀬 智子 武庫川女子大学, 音楽学部, 教授 (80388800)
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研究分担者 |
奥野 竜平 摂南大学, 理工学部, 教授 (90294199)
松本 佳久子 武庫川女子大学, 音楽学部, 教授 (90550765)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 音楽療法 / 認知症予防 / 楽器演奏 |
研究実績の概要 |
本研究では認知症に罹患する前の健康な中高年者への予防的取り組みとして楽器演奏に着目し、認知症予防を目指した音楽療法プログラムを構築する。健常者および軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)において予防効果があるというエビデンスが報告されていることから、初心者でも楽器演奏が可能であるICTを活用した電子楽器サイミスを導入して楽器演奏を中心とした音楽療法プログラムを実施し,認知機能の評価により予防効果を分析する.楽器演奏を中心とした音楽療法の有用性を明らかにすることにより、認知症予防のための音楽療法プログラム構築を目的としている.電子楽器サイミスはすでにタッチパネル,スイッチ,加速度センサ等,難易度や方法の異なるインタフェースが準備されている.本年度の研究計画は,「さらなる電子楽器サイミスによる演奏システムの構築」であった.電子楽器サイミスの特徴は、パソコンに内蔵された楽譜データを、個々の能力や好みに合わせた方法で(インタフェースで)演奏できることであり,本年度は従来のインタフェースに加えて、新たに,呼気・吸気を用いた笛型のユーザインタフェースの開発を実施した.さらに,「楽譜データの作成」を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フルートなどの管楽器は共鳴により発音をしているが,本研究で開発する型のユーザインタフェースはそれとは異なる.自作の小さなチャンバーに人が息を吹き込み(吸い込み),チャンバー内の圧を検出して,それをサイミスのプログラムで処理して発音するという仕組みである.チャンバーは密閉ではなく,開口部があり,そこを通して空気は大気(外部)との間で自由に出入りする.開口部の面積を2mm径から4mm径まで種々変えて,空気の流速(定常流)とチャンバー内圧(吸気圧)の関係を計測した.流速が増加するとチャンバー内圧は減少した.なお4mm径は呼吸器疾患のリハビリテーションで利用されている面積である.デジタル信号送信型圧センサとチップマイコンを使用した電子回路を試作し,ヒトの呼気・吸気により,回路が正常に動作することの確認を行った.また,このインタフェースに対応したサイミスのソフトウエアを開発し,呼気・吸気によりサイミスの演奏が可能であることを確認した.なお演奏の結果を計測・記録できるソフトウェアは現在作成中である.また「大きな栗の木の下で」などの楽曲(10曲)のサイミスデータを作成している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に作成した呼気吸気型インタフェースを用いた演奏実験を研究者間で実施し,安定して動作することを確認する.その後,計測実験が実施できるように,予備を含め,少なくとも5セットのユーザインタフェースの試作を行う. また,現在作成中の演奏の結果を計測・記録できるソフトウェアの動作確認を行い,実際に利用できるようにする. 難易度の異なる演奏方法に応じた楽譜データを準備し,個人の好みや演奏到達度に個別に対応できるように,サイミス楽譜データを作成する. なお,本研究ではグループでの楽器活動を実施するにあたり,初心者がより楽しく,効率的に上達してモチベーションを維持し,長期継続ができるような楽器活動プログラム案を考案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は生じたがインタフェースの開発等に必要な部品購入等により,ほぼ予定通りに執行している.令和3年度においては引き続きインタフェース試作に要する部品類,演奏データ計測解析器やソフトウェア,サイミス演奏データ作成のための参考資料として楽譜や歌集の購入を予定している.
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