研究課題/領域番号 |
20K00256
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
金田 卓也 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90265562)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会関与型アートプロジェクト / 芸術教育 / ネパール / 村落開発 / 発展途上国 |
研究実績の概要 |
令和2年度中にアートプロジェクトを継続中のネパールのムラバリ村において現地調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルスの感染状況の拡大により中止せざるを得なくなった。調査地ネパールにおいても感染拡大は続き、ムラバリ村の住民もロックダウンを余儀なくされ、厳しい生活を強いられることになった。外部との接触が限られた状況においても村人たちから村の中の資源を活用したアートプロジェクトの継続が求められた。 医療施設のないムラバリ村は感染症に対してきわめて脆弱であり、そうした村の持続可能な発展を図るためにはあらゆる角度からの検討が必要である。本研究の中心課題である「社会関与型アート」プロジェクトも持続可能な村落開発につながるものであり、コロナ禍の中、本研究の必要性が改めて認識される結果となった。 令和2年度の現地調査は実施することができなかったが、現地調査協力者と連絡を密にとりながら可能な限りの資料収集を行った。発展途上国におけるアートプロジェクトの推進に関しての認知度を高めるために外部とのコラボレーションも試みた。10月にはスイスのインターナショナル・スクールと協力して、竹素材を支柱にした集会所に持続可能な社会をテーマにした壁画を描くことを試みた。スイスの生徒たちが描いた絵の画像を送り、それを参考にして村の子どもたちが壁画を制作するという試みである。 12月に東京藝術大学において開催された美術教育研究会第26回研究大会ではムラバリ村のアートプロジェクトについて紹介する口頭発表を行った。また、3月には国立新美術館で開催されたアンデパンダン展においてムラバリ村の壁画と連動させたインスタレーションの展示を行った。また、スペインのエスプロンセダ芸術文化センターの協力の下にムラバリ村での活動をイタリアと日本の村での持続可能な発展と結びつける新たなアートプロジェクトを開始することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染状況の拡大により予定していたネパールにおける現地調査を中止せざるを得なくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年2月にはネパールにおける新型コロナウィルス感染状況はかなり収まっていたが4月に入り国境を接している隣国インドにおける変異株による急激な感染拡大の影響を直接受け、5月にはネパールは再びロックダウン状態となった。このような状況の中、当初予定していた今年度10月のネパールでの現地調査の実施は難しく、年度内の令和4年2月の実施も難しいことが予想される。また、令和4年2月に計画している研究成果発表の場としての現地協力者を招いてのシンポジウムと展覧会の開催も翌令和4年度に延期しなければならない状況も考えられる。感染拡大が終息すれば、現地調査を実施できるが、そうではない状況を想定して研究を進めざるを得ないといえる。 現地調査なしに研究を進めることは難しいが、令和3年度においても現地調査協力者の協力の下にアートプロジェクトの推進とその進捗状況の記録を可能な限り行いたい。現地協力者を介した聞き取り調査の結果、ムラバリ村ではかつて金属もリサイクルされており、古くなった真鍮製の食器を溶かして新たなものを作ることが可能であることが明らかになった。そうした金属加工技術は鍛冶屋のカースト集団によって受け継がれてきたので、今年度は鍛冶屋のカースト集団に伝わる伝統的な鋳造と鍛造の技術を生かしたアートプロジェクトを発展させたいと考えている。金属の他にも、土や等多様な持続可能な造形素材としての可能性を探りたい。 また昨年度同様、ムラバリ村でのアートプロジェクトに関しての認知度を高めるために他のアートプロジェクトとのコラボレーションも試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染状況の拡大により予定していたネパールにおける現地調査を中止せざるを得なくなったため。
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