研究課題/領域番号 |
20K00256
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
金田 卓也 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90265562)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会関与型アートプロジェクト / 芸術教育 / ネパール / 村落開発 / 発展途上国 / 持続可能な発展 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルス感染拡大のために令和3年度の現地調査も実施することができなかったが、継続中のアートプロジェクトの実施と調査資料の収集を現地協力者とのコーディネイトにより進めることができた。そのひとつは、9月にスイスのインターナショナル・スクールと協力して行った栄養価の高いアボカドの苗を植えるプロジェクトである。全校あげてのSDGsプログラムの一環としてムラバリ村における果樹栽培の必要性を伝え、大きなキャンバスにアボカドのイメージを描き、その絵をシンボルにアボカド植樹のための募金活動が生徒主導で行われた。募金によって購入したアボカドの苗は村の斜面にシンボリックな形に植えられ、ひとつのランドアートとして見ることもできる。 村の中で採取できる多様な色彩の土を顔料として土壁の民家の土壁に絵を描くことも試みた。また、村の伝統的金属工芸に携わるカースト集団にアートプロジェクトと関連付けた真鍮製のシンボル製作を依頼し、試作品を完成させることができた。そうしたアートプロジェクト実践の基礎となる子どもたちの生活の中における造形技術の実態調査も行った。木を刃物で削るなど基本的な造形技能を遊び道具を手作りする中で身につけていることが明らかになった。 6月にはスペインのエスプロンセダ芸術文化研究所主催のウェビナーで現代美術と持続可能な村落の発展を結びつけることの意義について解説した。11月には『持続可能な社会の形成と美術教育』を中心テーマにした東京藝術大学美術教育研究会第27回研究大会において大会企画の講演を依頼され、「Art for the Earth 持続可能な世界へ向けてのアートプロジェクト」というテーマで講演した。また、3月には昨年度同様に国立新美術館で開催されたアンデパンダン展においてムラバリ村のウコンを用いて染色した木綿布を素材にしたインスタレーションの展示を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大は調査地ネパールでも著しく、渡航困難な状況が続き、現地でもデルタ株の感染拡大の後, 一度終息の方向に向かったが, 新たなオミクロン株の発生により予定していた年度内の現地調査も断念せざるを得なくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は新型コロナウィルス感染状況が収まらず、年度内に予定していたネパールでの現地調査を実施することができず、令和4年2月に計画していた研究成果発表の場としての現地協力者を招いてのシンポジウムと展覧会の開催も令和4年度に延期しなければならなくなった。令和4年度に入り、新型コロナウィルスの感染拡大は終息の方向に向かいつつあるように見え、完全な終息に至らなくとも海外渡航が許可される状況になり次第集中的な現地調査を実施する予定である。 現地調査が困難な状況が続く場合は、令和3年度同様、現地調査協力者の協力の下にアートプロジェクトの推進とその進捗状況の記録を可能な限り行いたい。特に、今年度は、石、土、竹、草木といった自然素材を総合的に生かしたアートプロジェクトの実践と共に、アボカドの植樹をランドアート的な表現に結び付けたように持続可能な村の生活改善に直接結びつく新たなアートプロジェクトの開発を試みたい。現地調査の実施状況次第ではあるが、研究成果の発表の場としてのシンポジウムと展覧会の開催も実現させたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染状況により予定していた現地調査を中止しなければならなくなり、現地調査の結果に基づく成果発表の機会を設けることもできなかったため。その分、次年度に現地調査を集中して行い、その成果発表のシンポジウムと展覧会を実施する計画である。
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